月別アーカイブ: 2021年10月

『写楽殺人事件』

第29回江戸川乱歩賞受賞作、高橋克彦『写楽殺人事件』(講談社文庫 1986)を読む。
2回目のワクチン接種で外に出かける気にならないので、久しぶりにじっくり本と向き合った。

東洲斎写楽をモチーフにしているのだが、殺人事件ということは忘れ、流通を重視した田沼意次から寛政の改革を実施した松平定信へと世相が180度転換する中で現れた謎の多い写楽にどんどん惹かれていった。登場人物と一緒に画期的な研究に携わってるような興奮を覚えた。間違いなく名作である。

「シェアサイクル 帰宅困難で利用か」

本日の東京新聞夕刊に、7日深夜の地震で電車が止まった際に、スマホで登録ができ、自宅近くで乗り捨て可能なシェアサイクルの利用が急増したとの記事が載っていた。

現在国や都が進めるICTを活用した持続可能なスマートシティ構想では、脱化石燃料や健康、観光の切り札として自転車の活用が謳われている。自転車から自動二輪車、自動車へと発展してきたが、これからの環境都市では再び自転車に注目が集まっている。

ただし、安物の自転車が使い捨てされている現在の日本の風潮は、本末転倒な話になってしまう。物を大事に使う、工夫するという点を大切にしたい。

「モスクで爆発 100人死傷」

本日の東京新聞朝刊の国際面に、アフガニスタンのシーア派のモスクで爆発が起こり、100人を超える死傷者が出たとの報道があった。金曜日はイスラム教の安息日にあたり、礼拝が行われていることを知っての犯行である。記事には明記されていないが、スンニ派の過激派組織「イスラム国」が起こした可能性が高い。

ちょうど授業の中で、イスラム教の90%を占めるスンニ派と、イランを中心に信仰されているシーア派について触れたところである。同じイスラム教なのだが、今から1500年以上前の、イスラム教の指導者の後継争いに端を発している。スンニ派はムハンマドが神から預かったとされる言葉を記した「コーラン」と、ムハンマドの慣習をまとめた「ハディース」が信仰のベースとなっている。一方、シーア派はムハンマドの血を引いた第4代カリフ(代表)のアリーの信者であり、指導者への帰依という側面が強い。

シーア派は数少ないとは言え、イランのほぼ100%の方が信仰している。また、イラクやイエメンではスンニ派とシーア派の割合が拮抗しており、絶えず政治の混乱が続いている。さらに、シリアでは人口の2割にも満たないシーア派の亜流であるアラウィー派が政権を握ったために、多数派のスンニ派への激しい弾圧が続いている。そのシリアのシーア派アサド政権を支持しているのが、レバノンを拠点とするシーア派の過激組織「ヒズボラ」である。シリアを舞台にスンニ派とシーア派の両過激組織が衝突し、多くのシリア難民が生まれている。

今回の記事もアフガニスタンだけの問題ではなく、中東全体の問題であるとの視野を大事にしたい。こうしたことを授業の中で育んでいきたいと思う。

「首都直下型 常に警戒を」

本日の東京新聞朝刊に、一昨日の首都圏を襲った地震の分析が掲載されていた。
記事によると、千葉県北西部を震源とする今回の直下型地震だが、原因は太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界付近で起きたという。あれっと思って少し調べてみた。

授業の中で、日本は4枚のプレートの合わせ目に位置しているという話は何度かしている。しかし、以下の平面図を見ても太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界は伊豆・小笠原海溝であり、関東から遠く離れている。今回は直下型地震なので、千葉県北西部の真下に震源がないといけない。

そこでネットで調べてみたところ、伊豆半島付近で北米プレートの下にフィリピン海が潜り込み、関東地方の地下深いところで、フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込んでいることが分かった。今回の地震の深さが75kmだと判明しているので、私たちが暮らす足元の地面を75,000m掘っていくと、下図にあるような今回の震源まで辿り着けるという訳だ。

『πのはなし』

金田康正『πの話』(東京図書 1991) を読む。
純粋な数学の話かと思ったら、著者は東京大学の大型計算機センターに務めており、コンピュータの性能をテストするベンチマーク・プログラムとしてπの計算を研究している学者であった。

古代ギリシャのアルキメデスが円周率を小数点以下2桁の3.14まで計算していた話や、πを求める計算式がいくつかある話など興味深かった。また、著者は執筆当時スーパーコンピュータで10億桁まで計算しており、小数点以下386,980,412桁目から6が10個連続並ぶとか、「123456789」と並ぶ箇所が2ヶ所、「987654321」が1ヶ所あるなど、超マニアックな話も面白い。