大関洋子『素敵なお産をありがとう:離婚、子連れ再婚、高齢出産の末に』(祥伝社 1991)を読む。
出版当時、埼玉県で高校の教員をしていた著者が、自らの出産映像を公開するまでの波乱万丈な経緯が詳らかに描かれている。
著者の大関さんは、大学卒業後すぐに学生時代の友人と結婚をした。しかしその結婚の半月程前に、夫となる男性の浮気を知り、不信感を抱えたまま結婚生活に突入することになる。幸い二人の子どもを授かったものの、夫婦の信頼関係は冷えきったままであった。そして当時16歳年下の合唱部の教え子と深い仲になり、子どもを連れて再婚に踏み切った。その後二人の子どもが新しい夫との間に出来たが、元夫との離婚協議がこじれ最中のことであり大変慌ただしいものであった。そこで、両親の愛の結果生まれた子どもを楽しく育てることこそが家族を支えるとの考えの元、新しい夫との間に授かった3人目の子どもの出産の一部始終を長男にビデオに撮ってもらったとのことだ。
元夫との冷たい夫婦生活の営みや教え子との関係など「過激」なシーンも途中に含まれる。高校の教員というと、「模範」的な家族を営まねばならないという世間の視線が付き纏うが、そうした視線をするりと跳ね返して、自らの理想的な家族像を追う著者の家族への強い思いと行動がよく伝わってくる作品である。
月別アーカイブ: 2008年4月
「国技・相撲」—近代以降の事件と名力士—
以下、私の友人が主催した企画です。
〈開催中の常設展示〉
第153回常設展示 「国技・相撲」—近代以降の事件と名力士—
日本の国技と呼ばれる相撲。その歴史は長く、古くは『日本書紀』にも記述されています。
しかしながら、「国技」と呼ばれ、スポーツとして扱われるようになったのは、明治以降のことです。西欧化のすすむ中、「蛮風」とされ存亡の危機にさらされた相撲は、制度の改善や「国技館」の設立等を経て近代的なスポーツとしての形を整えていきました。
今回の展示では、近現代の相撲の歩みを、『事件』と『ひと』の二つの観点から取り上げます。
相撲の組織や制度の近代化を推し進めるきっかけとなった、力士の処遇をめぐる事件や、マスメディアの発展によって誕生したスター力士たちの活躍を通して、今や日本を代表するスポーツの一つとなった相撲の歴史をご覧ください。
展示期間
平成20年4月17日(木)〜平成20年6月17日(火)
(利用時間・休館日をご確認ください)
展示場所
東京本館2階 第一閲覧室前
□ 国立国会図書館 東京本館 常設展示 □
『わたしの鎖骨』
花村萬月『わたしの鎖骨』(文春文庫 2000)を読む。
著者のデビュー当初の1990年から93年当時の短編集である。バイクやギター、格闘技対決など男性が好きそうな夕刊紙の連載小説のような題材の作品が多い。そして途中に、不自然な形で性交シーンや愛欲シーンが交えられている。反戦や人間性などのメッセージが込められ純文学的な彩りで飾られるピンク映画のような趣である。
横浜アンパンマンこどもミュージアム
『ワセダ三畳青春記』
高野秀行『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫 2003)を読む。
早稲田大学探検部に所属していた著者が、早大付近の家賃1万2千円のアパートで11年間もの間(寝)過ごしたどたばた顛末記である。確かに十数年前まで残っていた怪しい早稲田界隈の雰囲気がどんよりと滲み出ていた。
私自身早稲田南町にあった家賃2万5千円の四畳半のおんぼろアパートに住んでいたので、大学のサークルボックス化してしまうアパートの様相や、行動が不可思議なアパート住民、極端に食費にしわ寄せがいく貧乏暮らしなど、自分の学生時代になぞらえながら懐かしく読んだ。