月別アーカイブ: 2004年5月

『さいとうたかをのゴルゴ流血液型人物観察術』

さいとうたかを『さいとうたかをのゴルゴ流血液型人物観察術』(PHPエル新書 2002)を読む。
ありきたりな血液型占いの本かと思っていたが、作者は性格の構成要素である気質に注目し、気質は血液型の影響を強く受けていると論じる。そしてA型は「〜しなければならない」という義務感、使命感が行動の原理であり、B型は「好きだからやる」が全ての行動の原点であり、O型は「利益があればする」と打算的な行動指針を持つと作者は述べる。私自身の血液型であるO型がバランス感覚にすぐれるとお褒めの言葉が書かれていたので、読んでいてほくそ笑んでしまったが、結局は眉唾ものであろう。

『在日日本人』

宮本政於『在日日本人』(ジャパンタイムス 1993)を読む。
アメリカで精神科医を営んでいた作者が30代後半にして厚生省(当時)に入省し、日本の官僚世界と諸々の摩擦を経験しながら、官僚ヒエラルキーのいびつさを精神分析・集団心理の側面から暴いたものである。
「滅私奉公」で仕事に打ち込み、健康を害する生活を他人に誇示し、過労死を招き寄せるような生活がさも美徳のように語られる官僚社会,ひいては日本社会全体への警句となっている。

『演習編きめる!センター倫理』

清水雅博『演習編きめる!センター倫理』(学習研究社 2002)を一通り解いてみる。
高校生レベルとバカにしていたが、なかなか難問が混じっており手こずった。ギリシア哲学、儒教から実存主義までキーワードだけ押さえていったが、西洋哲学と東洋哲学の意外な共通点も発見し面白かった。

『教育思想(上):発生とその展開』

村井実『教育思想(上):発生とその展開』(東洋館出版 1993)を読む。
作者は慶応大学環境情報学部教授の村井純氏(日本のインターネット普及の草分けとして有名)の父である。この本の中ではギリシャ時代のソクラテスやプラトンからコメニウスやジョンロックなどの近代黎明期までの教育思想を系統立てて論じている。

古代から中世にかけては、キリスト教の普及やらルネッサンス、宗教改革などがありごちゃごちゃしていて整理がつかなかったが、作者は古代ギリシャの教育(Paideia)の発生にまで遡ってうまく教育の捉え方を3系統に分類し分かりやすく読者に提示している。その3系統とは、ソクラテスを代表とする〈善く生きようとする人間への関心に立つ〉人間主義と、プラトンを代表とする〈善さの理想への関心に立つ〉理想主義と、イソクラテスを源流とする〈現実社会での善さへの関心の上に立つ〉現実主義の3つである。

つまり作者はこれまでの教育思想は、子どもの中に成長の可能性を見出そうとするソクラテス的な捉え方と、子どもの外部に道徳を置き、その道徳に向けて教育を展開するプラトン的な捉え方と、現実の政治経済社会体制にうまく順応するための礼儀や温情、知識を磨いていくイソクラテス的な捉え方の3点に集約されるという。昨今の生徒指導や進路指導における現場での意見の相違などを冷静に見ていくと、上記の3分類された教育観の違いとして理解できるかもしれない。