月別アーカイブ: 2017年7月

『’89・東欧改革』

南塚信吾+宮島直機『’89・東欧改革:何がどう変わったか』(講談社現代新書 1990)をパラパラと読む。
東欧の地図を理解しようと思って、本棚の奥から引っ張り出してみた。学生時代から本棚の奥に眠っていた本である。ユーゴスラヴィアの項目を執筆している柴宣弘氏の授業を受けたのがきっかけで手に入れた本だったのか、記憶が曖昧である。
1989年に民主主義革命が勃発し、一気にソ連の軛から離れたハンガリー、ポーランド、東独、チェコスロヴァキア、ブルガリア、ルーマニア、ユーゴスラヴィアの7つの国について、現在進行形(執筆当時)で政治の流れを追う。

7つの国といっても、その政治的展開は様々である。1956年の「10月革命」の流れを汲んで比較的穏健に改革を進めたハンガリー、「連帯」を通じて「国民の下からの要求」によって最初の非社会主義政権を誕生させたポーランド、西独への併合に対する反発から態度を硬化させ続けたものの一気に壁の崩壊へと向かった東独、学生デモに端を発したチェコスロヴァキア、比較的ソ連の手厚い保護のも農業工業を発展させてのっそりと革命を進行させたブルガリア、政府軍と反政府側の市街戦やチャウシェスク大統領の処刑といった過激な革命を成し遂げたルーマニア、国内の民族主義の台頭から共産党一党体制が瓦解したユーゴスラヴィア、などなど。

東独のホーネッカ政権について述べた下村由一氏の文が印象的だった。そのまま今のどこかの国の政権にあてはまりそうな内容である。

 自動車の急増とともに、時代遅れの車の吐き出す排気ガスが町を汚染し、とくに冬ともなれば屋内暖房の出す煙と重なって、息のつまりそうなありさまに市民は苦しんだ。そればかりか、ライプツィヒの近くに集中する化学工場の、これまた老朽化した生産設備のたれ流し、吐き出す廃棄物は周辺の町々に深刻な影響を及ぼしていた。
さらに共和国にとっては、唯一のエネルギー資源である褐炭が共和国内部に産出する。その褐炭は露天掘りのため、これまたひどい粉塵をまきちらすのである。
このように公害が市民生活のなかで重大な問題となり、市民の不満をつのらせてきたのにたいし、ホーネッカ政権は、公害を克服するために真剣な努力を試みようとしなかったばかりか、公害問題にかんするいっさいの発言を封じ込め、問題の存在すら認めようとしないという態度にでた。空気が汚れている、川が、森が死滅しつつある……そんな指摘をするだけで、共和国に敵対する分子とみなされないありさまであった。自然と環境の破壊こそ、最大限の利潤の実現を第一に考える資本主義に固有の反人道的体質の表われ、と宣伝しつづけてきた以上、社会主義における問題の存在を認めるわけにはいかなかったのであろう。
それに、ここまで深刻化した事態を抜本的に改善するには、経済的・物質的にホーネッカ政権にもはやその力は残されていなかったというべきであろう。できるのは、福祉ばらまき=さまざまな名目での割り増し金・補助金の支給によって、市民の口を封じる糊塗策ばかりであった。
環境問題が全人類的な課題となり、その解決によってこそ政治・社会体制の優劣が決定されるともいえる現在、この課題への取り組みを放棄したホーネッカ政権の存在理由は失われたのである。

『100文字でわかる世界地図』

橋本五郎『100文字でわかる世界地図』(ベスト新書 2007)を一気に読む。
読売新聞社特別編集委員を務める著者が、経済、紛争、暮らし、環境などの世界のニュースが分かりやすくなるための地図の立体的な読み方を分かりやすく説明している。チェチェン紛争や、コンゴ民主共和国の内戦状況、パレストナ政府内のハマスとファタハの違いなど、言葉は聞いたことあっても、あまり掘り下げて知ろうしなかった事件について、周囲の国の政治的思惑を含めて、地理的側面からアプローチすることができて良かった。

『活火山活断層 赤色立体地図でみる日本の凸凹』

千葉達朗編『活火山活断層 赤色立体地図でみる日本の凸凹』(技術評論社 2006)を読む。
前半で日本列島に位置する4つのプレートを立体地図で示している。糸魚川-静岡構造線や中央構造線、北海道中央の縦縞模様や東北地方の梯子模様など、日本の土地の凸凹もプレートの動きと合わせてじっくりと眺めてみると嫌が上にも興味が湧いてくる。数年前に大鹿村の中央構造線の博物館で学芸員の方から話を伺った際の興奮が蘇ってくる。
また、火山の仕組みや解説も分かりやすかった。二酸化ケイ素(結晶は石英)の含有量でマグマの性質ががらりと変わる。また、それに伴い岩石の種類や火山の形も変化するのだが、写真やイラスト入りなので、頭の中で整理することができた。

また、後半部では、赤色立体図を用いて、108の活火山と98の主要な活断層がまとめられ、カルデラ湖や馬蹄形火口の形成過程についての詳細な解説も加えられている。どのページもそのまま拡大コピーして博物館の壁に掲示しても全く遜色のない出来栄えである。

溶岩の化学的な性質の違いが、数万年後の風景に大きな影響を与えるというダイナミクスさに畏れ行った。もう少し勉強が必要である。

『ナショジオが行ってみた 究極の洞窟』

ナショナルジオグラフィック『ナショジオが行ってみた 究極の洞窟』(日経ナショナルジオグラフィック社 2015)を読む。
ジャンボジェット機がすっぽり収まってしまうほどの大きさを持った、ベトナムのソンドン洞窟や中国・広西チワン族自治区の洞窟群などの巨大洞窟や、メキシコ・クエバ・デ・ロス・クリスタルの結晶の洞窟、メキシコ・マヤのセノーテ水中洞窟などの不思議な魅力について、写真や3Dモデルなどで分かりやすく説明されている。

本の奥付を読んでいて、ナショナルジオグラフィック協会が、1888年に「地理の知識の普及と振興」を目指して設立された100年以上の歴史を持つ団体だということを初めて知った。

『宇宙から見た地球』

福島県いわき市にあるいわき市立常盤図書館で、地学に関する本を3冊読んだ。
ニコラス・チータム『宇宙から見た地球』(河出書房新社 2008)を読む。
カラフルで緻密な地球の衛星画像データの写真集である。古代ギリシャ哲学者エンペドクレスが主張した世界を構成する四代元素「大地・水・大気・火」という4つ視点から、地球の様々な実像に迫る。
グレートリフトヴァレーのスケールの大きさやパミール高原の波打つような隆起など、地球が動いているというリアルな感覚がよく伝わってきた。