荻村伊智朗『スポーツが世界をつなぐ:いま卓球が元気』(岩波ジュニア新書,1993)を読む。
ブログで検索してみたところ、20年ほど前にも一度読んでいた。話のスケールが大きいので、さらっと読み流すつもりが、話に引き込まれていった。
卓球は元々欧州のスポーツだが、日本、中国、韓国の東アジアの国々の方が競技レベルが高い。ウィキペディアにも掲載されている「ピンポン外交」が興味を引いた。オリンピック加盟以前の国際卓球連盟では、憲章の中に「国旗・国歌は使わない」と謳っていた。1971年に名古屋の世界選手権では、国旗・国家を使わないということだったので、当時の中国代表の台湾だけでなく、中華人民共和国も招待されたのである。そして大会後、アメリカ選手団は名古屋から香港を経て、直接中華人民共和国に入り、卓球外交をすることができた。これが翌1972年の2月のニクソン訪中、米中国交回復へとつながっていったのである。
また、著者は今から30年以上前なのに、部活動に対して警鐘をならしている。ワークライフバランスや働き方改革にまで踏み込んでいる著者の先見の名が伺われる。以下引用してみたい。
授業が終わったあとも学校に残ってスポーツ活動をする国は、日本だけです。ヨーロッパにもないし、ほかにもほとんどありません。かなり特別な現象だと思います。
先生の生活も、部活を指導していても、家へ帰って先生としてのホームワークをしなければいけないという点は変わりませんから、かなり圧迫されています。先生の家庭生活のことも考えなければいけません。いろいろ考えると、競技スポーツの底辺としての部活は、だんだん少なくなっていくだろうと思うのです。