応地利明『絵地図の世界図』(岩波新書 1996)を読む。
京都大学で人文地理学を専攻する著者が,江戸時代の「拾芥抄大日本図」や「金沢文庫蔵日本図」,「仁和寺蔵日本図」などの古代図,さらにはそれらの元になった「行基図」に描かれた「羅刹国」や「雁道」の正体を「今昔物語集」から明らかにする。最後まで読み終えることは出来なかったが,人文地理学の一端を垣間見ることが出来た。
月別アーカイブ: 2019年7月
「元文科次官 前川喜平さん × 城南信用金庫顧問 吉原毅さん」
本日の東京新聞朝刊に,同じ麻布中学・高校の同級生であった元文科次官の前川喜平氏と,城南信用金庫顧問で小泉純一郎元首相らと脱原発活動を続ける吉原毅氏の対談が掲載されていた。話は教育行政に留まらず,社会全体に警鐘を鳴らす事柄にまで踏み込んでいく。
その中で,吉原氏の次の発言が気になった。「時間短縮」「スピーディーな運営」という名のもとに,社会のあらゆる所で議論が無くなっていると感じる。結論ありき,マニュアルありき,規則ありき,前例ありきで議論そのものが無駄なものと捉える風潮が蔓延している。どげんかせんといかんね。
当時(小泉政権時)は組織が生きていた。今は全然違って,政府の上から言われたことを全部やらないとダメっていう絶対服従みたいなことをやる。小泉さんは,僕も付き合いあるから言うけれども,決めたらドーンとやるけれども,その前に必ず意見を言わせるんですよ。
僕がびっくりしたのは,今原発反対をやってるんだけれども,小泉先生は違う意見を聞くんですよ。僕らなんかが「あんなの頭きちゃいますよね」って言うと,そんなことはない,民主主義なんだからいろんな意見があっていい,違う意見があってはじめて成り立つんだと。懐がでかいなと思ったんです。たぶん小泉政権は「万機公論に決す」で,最後は政治決着だというところがあった。今はいきなり結論ありきで,とにかく黙って従えと。この度量の狭さは,政府だけじゃなくて,現代社会に,いろんな企業も含めて組織体の共通の社会病理みたいになっている。
(中略)力で勝負とか問答無用とかね。言論しない,言論に重きを置かないでいきなり結論がある。別に安倍さんの悪口を言ってるわけじゃなくて,世の中全体がそうなってるのはどうしてだろう。不思議です。
自転車整備
「ウイグル自治区巡り二分」
本日の東京新聞朝刊より。
中国というと,世界一人口の多い漢民族の国だとステレオタイプに捉えてしまいがちである。しかし,中国は国内に少数民族の自治区を多数抱えており,多民族国家という側面がある。但し,中国の沿岸部に居住する漢民族が人口の9割近くを占めており,共産党支配の政治や経済も漢民族が中心であり,チベットやウイグル自治区に対する弾圧や民族「浄化」に対する批判が繰り返されている。1学期の地理Aの授業でも少し触れたところである。
こうした中国政府を支持する国と批判する国に色分けし分析を加えたのが,今日の記事の内容である。「敵の敵は味方」という政治の根本原理が手に取るように分かる。中国を支持するのは,米国の敵であるベネズエラやボリビア,キューバ,また,インドの敵であるパキスタン,イスラエルの敵であるシリア,サウジ,エジプトなどが名を連ねる。また,治安の悪化が懸念されているアフリカのスーダンや,南スーダン,ソマリアといった国々が中国支持に回っているというのも恐ろしい話である。
地図をよく見ると,コンゴ民主共和国やミャンマー,ジンバブエ,ベラルーシのように,国内の少数民族や反政府組織に対する強圧政治を敷く国が中国政府に靡(なび)くという動きは,これからの国際政治を眺める一つの視座になるだろう。今後とも中国の政治経済に左右される世界情勢には注意を払う必要がある。
『藝人春秋』
水道橋博士『藝人春秋』(文藝春秋 2012)を読む。
浅草キッドの水道橋博士が出会った伝説の藝人とのやり取りが綴られる。そのまんま東,甲本ヒロト,石倉三郎,草野仁,古舘伊知郎,三又又三,堀江貴文,湯浅卓,苫米地英人,テリー伊藤,ポール牧,稲川淳二といった錚々たる面々の本性が暴かれる。
ここ数日,吉本興業所属の芸人が詐欺グループの忘年会で「闇営業」したとのニュースを巡る顛末が喧しい。この本で書かれている昔の芸人世界の話もなかなかのものである。