本日の東京新聞朝刊に、特定秘密保護法に反対する大学生が取り上げあられていた。学生の主張の中身よりも、そのスタイルの新鮮さ(?)に注目した内容となっている。このような金にもならない記事を掲載し続けている東京新聞の姿勢は素晴らしい。
歴史を紐解くまでもなく、どの国でもどの時代でも、社会の雰囲気を変えていく先導は学生である。やれ背後のセクトがどうたらこうたらとか、おしゃれなスタイルがああではないこうではないという野次が出てきそうだが、学生自身が考える一番効果的なスタイルを追求してほしい。
記事の最後にある、「僕らより下の大学1、2年生や高校生が僕らの方向をまねて、僕らが『だせえ』と言われるほどのデモをしてもらえるなら、それ以上のことはないな」という明治学院の学生のコメントが秀逸である。
月別アーカイブ: 2014年10月
『平家伝説殺人事件』
内田康夫『平家伝説殺人事件』(飛天出版 1995)を読む。
先日読んだ『後鳥羽伝説殺人事件』に続く、浅見光彦が登場するシリーズの2作目である。
平家の落人が住みついたという伝説が残る、高知県四万十市西土佐藤ノ川地区を舞台にした不可解な連続殺人事件である。
帝国書院の地図やGoogleMAPを片手に、南国土佐の藤ノ川地区に思いを馳せながら読み進めていった。
浅見光彦の活躍よりも、桃源郷伝説を彷彿させるような隠れ里の集落の様子の方が印象に残った。
機会があれば訪れてみたい。
「道徳の教科化 心を評価する危うさ」
本日の東京新聞朝刊に、道徳の教科化に対する批判の社説が掲載されていた。分かりやすい良い文章だったので引用してみたい。
小中学校の「道徳の時間」を検定教科書を使う正式な教科に格上げし、子どもの人格の成長ぶりを評価する。中央教育審議会が文部科学相に出した答申である。大人はそんなに立派な存在なのか。
現行の道徳は教科外活動とされ、検定教科書はなく、成績評価もなされてこなかった。これが二〇一八年度から「特別の教科」に位置づけられる見通しとなった。
国定教科書を用いた戦前の「修身」は愛国心といった徳目を国民に植えつけ、軍国主義教育の中核を担った。戦後の道徳教育はその反省に立って行われてきた。答申が時計の針を巻き戻す結果を招かないか気がかりだ。
国語や算数・数学、理科、社会などの既存の教科は、先生が自らの知識や技能、経験も踏まえ、子どもに伝授するのにふさわしい分野といえる。テストという物差しをあてがい、習得具合を客観的に評価することができるからだ。
道徳は対照的だ。物事の善悪や正邪にとどまらず、人間の生き方や価値観をも正面から取り上げる分野である。子どもの心奥に働きかけ、人格形成に大きな影響を与えるだろう。無論、テストでその発達ぶりを測ることはできない。
そこで、答申は、点数式を排除して記述式の評価を求めたが、子どもの内面の在りように成績をつけさせることに変わりはないのだ。先生個人の主義主張や好き嫌い、えこひいきが入り込む。
最大の問題は、何をどう評価するかだ。国が一律の物差しを作れば、自由かつ多様であるべき価値観や思想信条を統制することになりかねない。成績評価がついて回るから、子どもや親が無批判に受け入れてしまう懸念がある。
国の検定基準に見合う教科書が導入されるのも心配だ。愛国心を定めた教育基本法に照らし、重大な欠陥があると失格になる。合格を意識するあまり画一的な偉人伝や格言、素材に偏らないか。やはり戦前をほうふつさせる。
そもそも世の中の大人に、子どもの道徳性を評価する資格があるのだろうか。
小渕優子前経済産業相はお金を正しく管理できず、松島みどり前法相はうちわを配り、そろって法律違反を疑われて閣僚を辞めた。国の責任者に選ばれる大人でさえ、人格完成へまだ道半ばではないか。
貧困、紛争、温暖化…。社会の難題の解決には、人間の道徳心が肝要である。大人も子どもと一緒に悩み、考え、学び合う。その姿勢を欠いては、未来は危うい。
『後鳥羽伝説殺人事件』
内田康夫『後鳥羽伝説殺人事件』(角川文庫 1982)を読む。
内田氏の初期の作品で、名探偵浅見光彦のデビュー作である。
承久の乱の後、後鳥羽院が隠岐に護送される途中で妨害に逢うことも予想され、後鳥羽院の影武者を用意したという伝説をモチーフとしている。伝説によると、影武者の後鳥羽院は播磨、船坂峠を越えて、津山、美作を経て伯耆に渡ったのだが、本物は海路で安芸までやってきて、尾道あたりから北上し、御調、庄原を通り、高野町で一冬越してから仁多を経て松江に向かったらしい。
本作では、その本物の後鳥羽院が歩いたルート上で起きた連続殺人事件を、被害者の兄である浅見光彦が担当刑事と二人三脚で解決に向けて歩んでいく。
デビュー作とは思えないほど、人物設定も文体も完成されていた。
ソファーに寝そべりながら、中国地方の地図を片手に一気に読んでしまった。
『齋藤孝のざっくり!日本史』
齋藤隆『齋藤孝のざっくり!日本史:「すごいよ!ポイント」で本当の面白さが見えてくる』(祥伝社 2007)を読む。
一問一答式に歴史用語を暗記するのではなく、話のネタにできるほどに、歴史の文脈を見つけて語ることができることが本当の歴史の見方だという。また、まずざっくりと大枠をつかむこと。そしてそれを3つのキーポイントで説明できるように理解することが大事だと述べる。
これまで年号ごとに地名や人物名、史料の中身を覚え、次の展開の事件や人物名に繋げていくことが日本史の勉強だと思い込んできた。しかし、斎藤氏は「廃藩置県」や「大化の改新」「三世一身の法」の中身よりも、それが歴史的にどういう意味を持ち、「現在」にまで繋がってきているかをざっくりと大胆に説明している。著者の勢いに押され、つい「なるほど」とうなづいてしまうことがいくつかあった。