月別アーカイブ: 2020年7月

「ベラルーシ大統領『コロナ乗り越えた』」

本日の東京新聞朝刊に、ベラルーシのルカシェンコ大統領のコメントが掲載されていた。ベラルーシと言ってもピンとこない人が大半であろう。ロシアの西側、ポーランドの東側に位置し、人口も1000万人に満たず、一人当たりのGDPも7000ドル弱の中流国である。ロシアべったりの国である。日本との貿易もあまりなく、馴染みの薄い国である。

大統領を務めるルカシェンコ氏は「欧州最後の独裁者」とも称され、コロナ禍でも、ウォッカを飲めば治るとトランプ大統領ばりの奇想天外ぶりを発揮している。また、旧ソ連の指導者に憧れているのか、政治スタイルを変えようとせず、国内の自由な政治活動や表現の自由が大きく制限されている。

ドラえもんのキャラに例えるとスネ夫のような存在で、ロシアというジャイアンに陰に隠れつつ、ジャイアンを上手く利用して立ち振る舞うコバンザメのような立ち位置を保っている。米国の核の傘にすっぽり入ってひたすら経済を優先してきた日本によく似た国と言っても良い。

模索舎

本日の東京新聞朝刊に、学生時代何度か通った模索舎が特集されていた。2、3年前にたまたま訪れたことがあるのだが、店に一歩入った途端、学生時代に戻った気がして、不思議な感覚にとらわれたことを記憶している。

 

「ウイグルの『強制労働』火種に」

本日の東京新聞朝刊に、中国西部に位置する新彊ウイグル自治区に暮らすイスラム系少数民族の悲哀が報じられています。1・2組は授業中に新疆ウイグル自治区の人権問題に関するドキュメンタリー映像も紹介しましたが、覚えているでしょうか。

期末考査でも、新彊ウイグル自治区に触れたい思い、中国の農業とイスラム教の特徴の両方を答えさせる問題を敢えて出題しました。中国の少数民族や台湾の問題は決して対岸の火事ではありません。アメリカのような自国の都合を優先させる外交姿勢は賛同できませんが、日本や韓国、台湾、香港、ベトナム、フィリピンなどの東アジアの国々が共同して、中国の少数民族の弾圧に対し、人道的な観点から批判の声を上げていくべきです。そのためには、ウイグルやチベット、内モンゴルでの現状を正しく知ることが大切です。

期末前の授業でも強調したところですが、香港やウイグルでの抑圧と、インドとの国境紛争、南シナ海での軍事挑発の根っこは同じという視点が大切です。是非、以下の記事を熟読してみてください。

『インパラの朝』

第7回開高健ノンフィクション賞受賞作、中村安希『インパラの朝:ユーラシア・アフリカ大陸684日』(集英社文庫 2013)を読む。
著者は執筆当時20代で、主にヒッチハイクやバスでユーラシア大陸を横断し、中東からアフリカを回り、現地で暮らす人々と食事を共にしながら、生活者の目線で世界の多様性やあり方について綴っていく。
少し長いが引用してみたい。

 先進国で不要になった車やバイクやパソコンは、再利用品として輸出され、途上国の街に溢れた。リサイクルのアイデア自体は、理想の循環システムとして歓迎すべきことだった。先進国でゴミを減らして、途上国の生活を低いコストで便利にした。けれどその一方で、先進国で廃車になった古いバスやトラックは、排気ガスを撒き散らし、途上国の至るところで大気汚染を引き起こしてきた。
黒く曇った街を歩けば、あっという間にメガネが曇り、黒くなった鼻の穴からヘドロの玉が転がり出てきた。途上国で壊れた車や家電製品は行き場を失い、森や砂漠に捨てられたまま、醜態をさらして朽ち果てた。一部はスラムの住宅街で、鉄くずとなって錆びついて、溢れ出してきたエンジンオイルが大地に染み込み汚泥をつくった。サンダルを履いて道を歩けば、足の甲や爪の間にゴミが積もって黒ずんだ。小さな子供や老人も、すすけた顔を拭きながら、汚れた両手で生きていた。
私は咳きこみ、気管支を痛め、両目が充血するたびに、できることならと、いつも思った。できることなら、わずかの予算を割り当てて、中古品に手を加え害の少ない車に直し、メンテナンスの知恵を授けて、それから輸出できないものか。それでも壊れてしまったものはパーツごとに分解し、完全なゴミとなる前に再活用する体制を整えてみてはどうだろうかと。
けれど、こうした地味な支援はおそらくあまり好まれない。もっと派手に輸出して、環境もしっかり破壊してから、先進国の高い技術で環境整備に乗りだすほうがずっと予算も消費できるし、見栄えも立派で分かりやすくて高い評価を受けるだろう。気管支だって痛めてみないと、医療支援のしがいもなくなる。国際支援の実績をアピールできなくなるだろう。

著者は、先進国の都合や思い込み、国際競争の中で、アフリカの支援が決まっていく過程に疑問を抱く。中国が先頭を切って道路や港湾を整備しているので、他国も負けずにインフラ整備支援に金を落としていく。また、青年海外協力隊も、その協力の中身は二の次にされ、どこへ何名派遣したという実績作りのために運営されている側面がある。「国際協力」という錦の御旗のもと、アフリカやアジアでは、先進国の文化や流儀を押しつけられ、生活環境が破壊され、貧困が加速していく。著者はそうした負のスパイラルに踏み込んでいく。

「バイカル湖生態系危機」

本日の東京新聞夕刊より。
こちらも生徒の発表で紹介されたロシアのバイカル湖である。バイカル湖はの湖水面積は約31,500km2で、琵琶湖の47倍にも及ぶ。最大水深は1700mで、その水量は地表の淡水の2割を占めるという。

ちなみに、地球上には13億8485万km3の水量があるが、そのうちの97.4%は海水である。残り2.6%の淡水3598.7万kmのうち、76.4%は南極やグリーンランドなどの氷河で、22.8%は地下水となっている。つまり、それらを除いた地表の湖水や河川水などを合わせても、淡水全体の0.8%に過ぎない。ざっと計算すると28.8万km3である。バイカル湖にはそのうちの2割、つまり6万km3の水量を湛えていることになる。

水深200mで太陽の光は水面の0.1%となるので、バイカル湖は世界でも珍しい淡水の深海魚が数多く棲息している。「ロシアのガラパゴス島」の異称もあり、1996年に世界遺産に登録されている。このバイカル湖周辺で自然保護区域の指定が解除され、森林伐採が激化するというのが記事の内容である。

シベリア鉄道は日本でも人気のツアーとなっており、ロシア国内のことに日本人がとやかくケチを付ける問題ではない。しかし、世界の共通遺産なので、何かしらの枠組みで対応することはできないのであろうか。