日別アーカイブ: 2021年10月5日

「豪の源泉配備 支持6割」

本日の東京新聞の国際面の記事から。
つい見過ごしがちな記事である。オーストラリアが米英の原子力潜水艦を配備することに対する、オーストラリア新聞の世論調査の結果が報じられている。
もともとオーストラリアはフランスと共同で自前の原子力潜水艦の開発を進めていたが、それでは間に合わないので、米英製の原子力潜水艦を導入することになったということである。

いきなり原子力潜水艦と言われても、ピンとこない人が大半である。かくいう私もそうである。ネットの情報を調べたところ、原子力潜水艦は核分裂エネルギーを動力源とするため、大気と絶縁した長時間航行が可能で、燃料消費量がきわめて少なく、1回の燃料装入で数年間航行を維持しうる大出力を出せるとのことである。

こうした記事の背景に、米英による中国封じ込め政策を指摘しておきたい。「一体一路経済圏構想」を押し進める中国は、南シナ海やインド洋で覇権を握り、欧州やアフリカの市場を牛耳りたいとの思惑がある。一方、米国や英国、インド、日本の4カ国は、オーストラリアを巻き込んで、中国の拡大を抑えたいとの戦略がある。バイデン大統領が執拗に香港や台湾、新疆ウイグル自治区での人権問題を持ち出すのも、こうした戦略に沿ったものである。

しかし、オーストラリア国内には多くの中国籍の人たちがおり、中国との貿易がオーストラリア経済を支えてきたと言っても過言ではない。オーストラリアにとって中国を敵に回すということは、自国の経済基盤が崩されるということと同義である。

そうした背景を踏まえて考察していくと、オーストラリアの米英の原子力潜水艦の配備の是非は、オーストラリアの政治経済に大きな影響を及ぼす問題であるということが分かる。米英豪で作る安全保障の「AUKUS」が、オーストラリアの経済に致命的な打撃を与える決定打となるおそれもあるのだ。

3学期の授業の中で、オーストラリアを巡る諸事情について補足したい。

『天平のひびき』

岸部成雄『天平のひびき』(音楽之友社 1984)をパラパラと読む。
音楽之友社という音楽系の出版社から刊行された本で、正倉院に保存されている琵琶や琴、鼓などの和楽器の特集となっている。日本古来の歴史というよりも、中央アジアの文化が色濃く滲み出た楽器が写真入りで紹介されている。