月別アーカイブ: 2017年8月

「クルド自治区独立住民投票 区外キルクークが参加へ」

本日の東京新聞朝刊に、イラク北部キルクーク州議会が29日、クルド自治政府が計画する独立の是非を問う住民投票に参加する決議を採択したとの記事が掲載されていた。油田地帯のキルクークはクルド人自治区外にあるため、イラク中央政府が反発するのは必死である。

キルクーク州は、過激派組織「イスラム国」が台頭した2014年から自治政府の治安部隊ペシュメルがが実効支配している地域である。一方、キルクーク州にはクルド人の他、アラブ人やトルクメニスタン系住民も多く、住民の間の溝を埋めかねない。また、隣国のトルコ、イラン、シリアの各国はクルド人自治区の独立を問う住民投票に反対の意を表明している。

「進むも地獄、退くも地獄」という状況になっている。クルディスタン地域のみがきれいに独立できれば良いのだが、様々な民族が混在しており、どちらかに旗幟を鮮明にすることは、必然的にもう一方の反発を招くことになる。周辺国が納得する形で「うやむやに流す」という方法はないのであろうか。

クルド人
トルコ、イラク、イランなどにまがたるクルディスタン地方に居住する民族で、多くがインド=ヨーロッパ系のクルド語を使用するイスラム教徒である。約3,000万人の人口がありながら、国家を形成することができず、周辺で抑圧された生活を強いられてきた。独立の気運も高いが、イラクでは政府の弾圧により、多くの難民が発生したため、国連がクルド人の保護を決議した。

『「危ない」世界の歩き方』

岡本まい『「危ない」世界の歩き方』(彩図社 2006)を読む。
ジャマイカを中心に、海外を飛び回っている著者が、強盗に遭ったエピソードや詐欺に騙されそうなった経緯、現地でも近寄らない危険地帯を歩き回った体験などを語る。一つひとつの話は面白いのだが、全体としての繋がりがなく、ネットの面白ニュースを連続して読んでいるような感じだった。

『暗黒への出発』

高橋和巳『暗黒への出発』(徳間書店 1971)をパラパラと読む。
亡くなる直前の1970年暮れ行われた3つの講演録に、新聞や雑誌に掲載された著者自らの文学と思想の表白がまとめられている。文学に始まり公害、政治、大学など、様々なテーマで語るのだが、特に1960年代後半に盛り上がった学生運動の1970年代的意味を問い直そうという著者の思いが伝わってくる。
著者はそうした1970年代に入った自身の立ち位置について次のように述べる。

 ラディカルという言葉には二つの意味があって、急進的、本質的という二つの意味を持っているのは、たいへん意味のあることなのです。68、9年の非常に急進的な表面に現われた行動が、ちょっと行動しにくくなったということがありますが、ラディカルという言葉がもっていたもうひとつの、つまり本質的な−掘って掘って掘りまくって、あらゆることを懐疑してゆく、従来の政治思想、従来の哲学、従来の美学、そういうもののいっさいを、もう一度問い直してゆくべき時代であり、それを掘り下げることができるか否かが、私たちの存在に意義があるか否かが、問われる場だろうと思います。あらゆる観念群のそれぞれが、根本的に問い直されるものであり、それによって、もっとも本質的な懐疑の時代がはじまるだろうし、その懐疑に耐えなければならないと思います。

解体とは、これまでにもっていた幻想−大学の自治とか学問の自由とか−だけに限られず、私たちが依拠していた、いろいろな基本的なものと思われていた価値も幻想かも知れない、ということを疑い続ける、そしてその疑いを経過することによって、自分自身の立つ瀬がなくなるかも知れないけれども、それをあえてやる、という意味での解体です。そういう作業の一端を分担してやることになるだろうと思うわけです。たまたま私は病気をしてしまいましたが、人間というのは、なにかある一定の職場について一定の仕事をしていると、その仕事や自分の生命が永遠に続くように錯覚しがちですが−存在の不安定と同時に生命の大切さというものが、なにかの破綻によって逆に実感させられるのですが、そういう実感を生かしながら、ニーチェの言葉を借りれば、「積極的ニヒリズム」とでもいうか、そういう意味での解体作業を、文学あるいはエッセイの領域でやっていきたい。行動面でも、自分にとって切実と思われる部分については、問題主義的にかかわっていきたい。つまり、ある党派に加担するのではなく、それについて人びとが結集するところの問題別闘争委員会のようなものができるなら、一員として参加し、あるいは呼びかけることもありうる、というふうに思っています。

 

それにしても、上記の文章を高橋氏は39歳で書いているのである。自分自身の馬齢と比べては滅入ってしまう。
本の背表紙に「寅書房」なる古本屋のラベルが貼ってあった。電話番号もまだ東京03の後に3とか5の数字がつく前のものである。学生時代に何回か立ち寄り、社会評論社が出している雑誌を何冊か購入した記憶がある。確か近隣の古本屋も党派別になっていたと記憶しているが。

『眠れないほどおもしろい地理の本』

[地理と歴史]プロジェクト21『眠れないほどおもしろい地理の本』(三笠書房 2004)を半分ほど読む。
日本と世界の地理に関する豆知識がクイズ形式で展開される。しかし、本当にまめまめした知識ばかりで、「人口が30万人以上なのにJRが通っていない『市』が二つ、どことどこ?」とか、「正式名称で書くと世界一長い首都は?」など、「そんなこと知るか」と毒づきながら読んだ。

アルメニアのキリスト教受け入れの歴史や、南極大陸のエレバス火山、エチオピア、スーダン、ソマリア、モーリタニア、ギニアのアフリカ5カ国の国名がそれぞれの民族の言語で「黒い」を意味するなど、なるほどと思う知識もあった。

『のんびり 自転車の旅』

バイシクルクラブ編集部『のんびり 自転車の旅:日帰りで行く小さなツーリング』(エイ文庫 2003)を読む。
雑誌「バイシクルクラブ」で連載されていた読者参加型のポタリング企画がまとめられている。林道や東京都心の裏道など、興味を唆る内容であった。自転車旅について、編集部は次のように語る。

自転車の旅は、日本の四季と風景を心から楽しむための、最良の方法である! 自転車ツーリングの醍醐味はこの言葉に尽きます。齢70歳になる某自転車愛好家も「村から村へ、変化のある旅がおもしろい」とおっしゃっていましたが、日本の良い点は、風景がコロコロと変わっていくこと。