土橋彰宏『超高速! 参勤交代』(講談社文庫 2015)を読む。
久しぶりに小説を心から楽しむことができた。
湯長谷藩(福島県いわき市)の藩主が江戸城の老中の策略により、たった5日間で家臣を従えつつ参勤交代を命じられることから話が始まる。途中剣や槍、弓の入り混じる戦闘場面あり、忍者活劇あり、ちょっとしたお色気もある、映画仕立ての作品であった。
5日間の参勤交代のエピソードはフィクションであるが、武芸に長じた湯長谷藩の4代藩主・政醇が吉宗にお目見えした史実に沿った内容となっている。幕藩体制という将軍と大名の封建的主従関係の中で、将軍に対する臣従を確認する役割を果たした参勤交代の持つ意味の重さは伝わってくる。
一応歴史小説であるが、平易な文体で書かれており、中学生でも数時間で読み終える作品となっている。また、東日本大震災後に書かれた作品で、原発を地方に押しつけてきた中央政府への疑問や郷土の土を汚した原発事故に対する批判も盛り込まれており、エンターテイメントの作品に込められた社会的な筆者の主張を読み解いていくのも面白い。