月別アーカイブ: 2009年10月

『動機』

横山秀夫『動機』(文春文庫 2002)を読む。
警察や司法、事件記者といった職業に従事する人たちが、ひょんなことで事件や陰謀に巻き込まれていく心模様が丁寧に描かれている。第53回日本推理作家協会賞を受賞した表題作の他に3編が収められている。

ここしばらく多忙を極め、心身ともにぐったりとしてしまい、ゆっくりと小説を読む心の余裕すらなかった。「忙しい」とは「心を亡くす」ことだと、改めて実 感した。しかし、ただ忙しい、忙しいと、目の前の仕事にのみ心を奪われていては、数年後には単なるつまらない小父さんになってしまう。
いつも前向きに、10年後の自己の姿を頭の片隅にいつも置いておきながら仕事に取り組んでいきたい。

パンフレット研究:相模女子大学

相模女子大学のパンフレットを読む。
1900年に東京の本郷に設立された日本女学校を母体とし、1909年に帝国女子専門学校となり、1946年に神奈川県の相模原市に移転されて現在に至る。あまり名前が知られていないが、110年の伝統がある女子大学である。
現在では日本語日本文学科、英語文化コミュニケーション学科、子ども教育学科、メディア情報学科からなる学芸学部、社会マネジメント学科と人間心理学科か らなる人間社会学部、そして健康栄養学科と管理栄養学科からなる栄養科学部と短期大学部で構成される。しかし、パンフレットを読んでも全くその魅力が伝 わってこない。昨年大きく学部改組を行なったようだが、とりあえず国文、英文、子ども、心理、栄養など女子大学的な学科を並べただけであり、カリキュラム にも工夫がない。大学院まで整備された管理栄養学科以外はどれもテキトーな御為ごかしといった印象を拭えない。
学長のコメントにこの大学の質が良く表れていると思う。

大学への進学に臨んで、共学の学校を志望する人は少なくありません。男女が同じ教室で一緒に学ぶのは、ある意味では楽し く、女子大から共学へ移行した大学は、近年いくつもありますが、本学が女子大学の旗を下ろすこと今後もないでしょう。それは、本学が時流に乗ろうとしない で、頑固を通そうとするからではありません。共学ですと、女子はともすれば男子学生に頼りがちになるところ、女子大では、すべてを、当然のことながら女子 の手でこなさなければなりません。そのことが女子の主体性、そしてリーダーシップを養い、社会に出て厳しい環境のなかに置かれても、それによく適応できる 女性を育てます。女性の強いアメリカで、伝統のある女子大学の人気が、今日においてむしろ高いのは、十分に理由のあることです。女子大に入学するのは、 けっして消極的な選択ではなく、またそうであってはなりません

多摩地区は大学激戦区なので、女子大学という看板を下ろすと商売にならないという経営判断は正しい。しかし上記のコメントは生活全般がメインとなる女子高校では成立するが、さすがに大学の場では万人の共感は得られないであろう。

パンフレット研究:千葉工業大学

千葉工業大学のパンフレットを読む。
1942年に東京町田市に成立された興亜工業大学として発足し、1950年に新制大学となり、工学部を置いて現在地に移転した歴史ある工業系大学である。
現在では機械サイエンス学科、電気電子情報工学科、生命環境科学学科、建築都市環境科学科、デザイン科学科、未来ロボティクス学科からなる工学部、情報工学科と情報ネットワーク学科からなる情報科学部、経営情報科学科とプロジェクトマネジメント学科からなる社会システム科学部の3学部で構成される。男の子憧れのロボット開発やフォーミュラカー設計など、モノづくりにこだわった工学部が大学の中心となっている。とりわけ未来ロボティクス学科に人気が集まっているようだ。
1・2年生はJR京葉線新習志野駅から徒歩7分の芝園キャンパスで、3年次以降はJR総武線津田沼駅から徒歩1分の津田沼キャンパスで学ぶ。東京駅から30分圏内にキャンパスがあるというのが人気の一つであろう。また、いたずらに学部やら付属校を増やすことなく、中堅の技術者育成という当初の理念から外れなかったことが大学生き残りの秘訣であろう。

パンフレット研究:足利工業大学

足利工業大学のパンフレットを読む。
寺院連合である足利仏教和合会により1925年に創設された足利実践女学校を母体として、第2次大戦後、月見ヶ丘高等学校が設置され、60年には男子部を併設、これらを基礎に、67年に4年制の工学部単科大学として発足した。

機械工学科、電気電子工学科、システム情報工学科、建築学科、都市環境工学科の5学科からなる。工業高校出身者が多く、どの学科も現場の第一線で活躍でき る技術者育成に特化されている。週刊エコノミストの「学力を育てる力大学ランキング」で第15位に、読売ウィークリーの「就職に『超』強い200大学ラン ク」でも7位に位置している実力校である。カリキュラムを見ても選択科目語学などの教養科目は極めて少ない。むしろ必修科目の演習・実験に最大限時間を割 き、高校の物理や化学の復習授業や資格取得、就職支援に力を注いでいることが分かる。

いたずらに文系との融合だの、環境だの、生活だのといった目新しい科目やコースを設置することなく、技術者養成の道を邁進したことが、大学の生き残りの一つの解決法として注目してよいだろう。

国内唯一の花火大学院が2006年に設置されている。

パンフレット研究:女子栄養大学

1933年に香川昇三、綾によって創設された家庭食養研究会を起源として、37年の女子栄養学園、50年の女子栄養短期大学の設立を経て、61年に4年制 大学として発足した栄養学部のみの単科大学である。東武東上線の若葉駅から徒歩3分と、埼玉の西部に住む者にとって通いやすい場所にある。
管理栄養士養成を目指す実践栄養学科、栄養士や臨床検査技師、家庭科教諭を目指す栄養科学専攻と養護教諭養成を目指す保健養護専攻からなる保健栄養学科、 そして食文化をテキトーに学ぶ食文化栄養学科の3学科で構成される。これらの学科・専攻は、入試の競争率でその人気が容易に伺われる。実践栄養学科は4倍 を越え、保健栄養学科は3倍くらい、資格を得られない食文化栄養学科は全入状態となっている。
(上記の文を読み返すに、一文が長すぎて読みにくい悪文である)

科目も専門に絞られており、資格や就職が具体的にイメージしやすいので、学生も勉強に取っかかりやすいのであろう。管理栄養士国家試験合格者数全国1位や 養護教諭就職率全国トップクラスの成績を誇る。目標の固まった高校生にはうってつけであろう。間違っても食文化栄養学科には「逝って」はいけない。