月別アーカイブ: 2017年2月

『PLUTO』

浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』(小学館ビッグコミックス 2004)全8巻を読んだ。
手塚氏の『鉄腕アトム』の長編ストーリー作品「地上最大のロボット」のリメイクである。
全8巻のうち、7巻くらいまでは一体どういう背景なのだろうと、謎が謎を呼ぶ展開で一気にページを繰っていった。
最後の8巻で合点が行くのだが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」となってしまい、いささか尻すぼみな結末であった。しかし、手塚氏も指摘していたであろう大義なき戦争の闇や近未来社会の歪みが描かれており、大作の持つスケール感を堪能することができた。

『大学のウソ』

山内太地『大学のウソ:偏差値60以上の大学はいらない』(角川oneテーマ21 2013)を読む。
日本の大学教育が欧米のみならず、アジア各国の大学から大きく遅れを取っており、のっぴきならない状況にまで来ていることに警鐘を発する。米国のエリート大学やフィリピンなどのアジアの一流大学では全寮制が基本となっており、ハードとソフトの両面で学生と教員のコミュニケーションを密にする仕組みがあり、その中で学生を徹底して鍛え上げている。著者は、大学の質を決める重要な要素は教員一人当たりの学生数にあると断じ、相も変わらずマスプロ教育を繰り返している早慶やMARCH、関関同立といった日本の偏差値60以上の私立大学に根本的な大学改革を促している。また、欧米の大学の教員学生比率と比べて遜色のない国公立大学に対しても、教育内容の改善を指摘する。
最後に著者は次のように指摘する。

 私たちが教育改革を論じるとき、常に考えておかないといけないのは、教育に過剰に崇高な理念を持たせるべきではないということです。
 明治以降の日本の教育は国民国家にふさわしい人材育成だったのですから、今に至るまで基本は「富国強兵」です。さすがに戦争はもうしないでしょうが、現代の強兵がグローバル人材であることは明白です。そうした中で、今、経済的に勝ち残れる人間を作るために、世界中の教育が動いています。日本も同じです。
 一言でいえば「多国籍企業で勝ち残れる人材」です。
 国や経済産業省や経済界が口を出し、文部科学省や教育委員会が追随しているのは、この「経済的に勝てる人間を作る」という大目標です。それが悪いと言ったところで、誰もが離島や山間部でスローライフはできないように、あるいはリーマンショックでも大震災でも止まらなかったように競争は止められないのです。こうした現実の中に、私たちがいることは認識しておくべきです。
 (中略)何が正しいのか、正しくないのか、自分はどう進むべきなのかは、もはや国家に目標をもらって国民一丸となってまい進するのではなく、個人が自分で考える必要があります。そしてその力は、多くの日本人には教育によって身に付いていません。自分の頭で考える工業製品は存在しないのです。
 何度も繰り返しますが、一部の自分の頭で考えられる人間はグローバル化で勝ち組になれますが、ほとんどの日本人は今よりも貧しくなっていくと思います。それを救うのは「正しい教育」なのです。

『就職に強い大学2014』

読売新聞社『就職に強い大学2014』(YOMIURI SPECIAL 76)を読む。
昨今の就職事情や就職率ランキング一覧に加え、企業が求める「グローバル人材」、それに対応する大学側の「アクティブラーニング」や「キャリア教育」などの取り組みが特集されている。この手のムック本にありがちな、広告を出している大学の提灯記事で埋め尽くされており、あまり読むべきところはなかった。

初めて知ったのだが、経済産業省が「社会人基礎力育成グランプリ」なるものを実施しているのだ。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を三つの基礎とする、12の能力要素の観点から大学を評価しようという試みだ。経産省のホームページにアップされている実践事例集に目を通してみたのだが、地域の企業と連携した実践形式の授業の域を出るものではなく、早晩「一定の成果をみた」という名目で廃止されるであろう。経産省の役人の作文に合わせた報告書作成の為の授業に、果たして何の意味が見出せるのであろうか。

星さいかランチコンサート

本日、昼時に時間を潰すため、たまたま目に留まったさいたま市役所前のパン屋に入った。
本でも読みながらゆっくりしようと一番奥まった座席に座るや否や、突然目の前でリサイタルショーが始まった。
星さいかさんというかわいらしい女性歌手で、春をテーマにした曲を力強く熱唱されていた。
生憎中座してしまったが、手が届くような距離で本物の歌手の歌声を聴くことができたのは嬉しい体験であった。


星さいかの『ときめきダイアリー』

『簡単に、単純に考える』

羽生善治『簡単に、単純に考える』(PHP研究所 2001)をほぼ読み終える。
昨年亡くなったラグビー元日本代表監督平尾誠二氏、スポーツジャーナリスト二宮清純氏、元カーネギー・メロン大学教授の金出武雄氏の3氏との対談集である。各氏とも斯界に名を馳せた人物で、将棋やスポーツ、技術開発における一瞬の勘やひらめき、忍耐力、創造力についての話が次から次へと続いていく。
ただし、名前先行でいまいち話が噛み合っておらず、話の醍醐味が頭に入ってこなかった。