月別アーカイブ: 2015年7月

『爪と目』

第149回芥川龍之介賞受賞作、藤野可織『爪と目』(新潮社 2013)を読む。
表題作の他、『しょう子さんが忘れているいること』『ちびっこ広場』の短編2編が収められている。
どの作品も家具や化粧、ファッション、育児などで繊細に変わる女性の心理をテーマとしており、おじさんの私が読んでも何らの共感をも感じ得なかった。

『ユーラシア大陸横断自転車2万キロの旅』

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加藤功甫、田澤儀高『ユーラシア大陸横断自転車2万キロの旅』(エイ出版社 2012)を読む。
横浜国立大学の大学院生の2人による、ポルトガルから日本までの11か月に及ぶ自転車旅行記である。
旅の途中でもスカイプで週に1回日本のラジオに出演したり、ブログを日々更新したり、WiFiのある部屋に泊まったりと、昨日読んだ1980年代後半のアナログな旅事情とは大きく雰囲気を異にしていた。世界各地での現地の人たちとの交流エピソードと子供たちの笑顔や綺麗な風景の写真が中心となっている。二人の会話体で話が展開していくので、あっという間に読み終えた。
しかし、延々と拡がる砂漠や爆風の中を往く過酷な旅なのだが、どこかしら「猿岩石」のヒッチハイクのような、箱庭的な冒険という印象は拭えなかった。いつでもどこでもコミュニケーションが取れるデジタルツールの進化のためか、誰一人としていない地平線の彼方まで続く道を行く孤独な旅が、ブログのネタ探しにスケールダウンをしてしまっている。
果たして我々はこの事実にどう向き合えばよいのか。

『ちゃりんこ西方見聞録』

川端裕介・川端るり子『ちゃりんこ西方見聞録―奈良からローマまでシルクロード15000キロ走破』(朝日新聞社 1991)を読む。
1989年に奈良・東大寺管長の平和メッセージを携えて日本を出発し、1年半かけて自転車でシルクロードを横断し、果てはバチカンでローマ法王に謁見するというスケールのどデカイ旅をした夫婦の記録である。偶然なのか、中国国内を旅行中に天安門事件が発生したり、イラン入国前にイラン革命の指導者ホメイニの死去のニュースを聞いたり、また冷戦崩壊と同時に各地で勃発するようになったイスラム地域の紛争を体験したりと、大変激しい政情の中をのんびりペダルを漕ぎ続ける夫婦の姿が印象的であった。インターネットや携帯電話が普及する前の牧歌的な時代である。また、当時社会主義国の中国では3ヶ月間近く監視役と一緒に旅をしたり、インフレに悩むユーゴスラビアの両替所の分厚い札束を受け取ったり、1989年当時の歴史の動きも感じる旅となっている。
旅の最後にはローマ法王に直に謁見し奥さんが妊娠してしまうなど、これまで読んだどの旅行記よりもスケールの大きい旅行記であった。

□ JACC日本アドベンチャー,サイクリストクラブ 日本国際自転車交流協会の公式webページ □
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『ドロップ』

品川ヒロシ『ドロップ』(リトルモア 2006)を読む。
軽妙な内容と文体だったので、最後まで飽きることなくサクサクと読むことができたが、評価の難しい作品であった。
漫画チックなキャラ設定と話のテンポに勢いがあり映画化もされている。しかし、テレビに出ている芸能人が書いたから注目されたのであり、作品単独としての評価はなかなか厳しいかもしれない。

蒙古タンメン中本

2015-07-23 14.05.34

仕事の帰りに西武線の秋津駅にあるラーメン屋「蒙古タンメン中本」で味噌タンメンを食した。
全く事前の情報がないままだったので、食べる前は辛さ自慢のありきたりなラーメンだろう、腹を満たせばいいだろうと思っていた。
蒙古タンメン中本の「基本形」となっている味噌タンメンを注文したのだが、具材と濃厚スープが絶妙に溶け込んでおり、「ああ、これはうまい」と同僚と話しながら、スープまで全部飲み干した。注文の際に餃子がないのかと落胆したのだが、ラーメンだけで十分な満腹感があり、食べ終えた後には餃子がないことにも合点がいった。
今度、家族を連れて訪れてみたい。