日本史」カテゴリーアーカイブ

「外国籍の1万9654人不就学」

本日の東京新聞朝刊に,全国で6歳から15歳の年齢の外国籍の子ども2万人が学校へ通っていないとの記事が掲載されていた。義務教育を管轄する文科省がこうした調査を行い,報告する意義は大きい。
埼玉県でも700名を超える児童生徒が公立の小中学校へ通っていない。本国の中学校を卒業していても,学齢期の生徒ならば小中学校に通って勉強できるので,まずは地元の市役所に相談してほしい。皆さんの周りにもこのような生徒がいたらご連絡ください。

大学の教職課程で「教育基本法」を学びます。日本史の授業でも扱いましたが,戦後の教育の根幹を定めた法律です。日本国憲法とセットで制定されました。
その第4条に「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とあります。国籍はこの中の「社会的身分」に相当します。国籍や保護者の立場の如何を問わず,十全な教育環境を整備していくことが,公立学校の果たす義務となります。

「尾を引くA級戦犯合祀」

本日の東京新聞朝刊に,創立150年に合わせた靖国神社の参拝要請を宮内庁がお断りしたとの記事が出ていた。1978年にA級戦犯14人が合祀されて以来,天皇の参拝は途絶えている。記事によると,昭和天皇自身がA旧戦犯合祀に不快感を示しているとのこと。

1学期の授業で,2.26事件以降,日本がどのような経緯を経て敗戦,そして東京裁判に至ったのか,一貫してその流れで板書をまとめてきたつもりだ。
A級戦犯とは,たくさん人を殺した数で決まるのではなく,戦争を計画したり自ら主導したりした罪に問われた「指導者」のことである。東条英機ら28名が起訴され,25人が有罪となっている。決して「A級>B級>C級」という関係ではない。つまり,A級戦犯を裁くということは,日本が戦争に至った原因を白日の下に晒すという意味合いがある。逆に言うと,A級戦犯を肯定する形で祀るということは,日本が勝ち目の無いアジア太平洋戦争に突っ込んでいった歴史を隠蔽するということである。

私達が近代史を学ぶ意味は,日本だけでなく,戦争の20世紀と言われた第一次世界大戦,第二次世界大戦,その他の戦争に至った失敗の原因を理解し,これからの政治や経済,社会に生かすことである。

1985年の5月,数年前に鬼籍に入られたが,当時の西ドイツの大統領ワイツゼッカーは第2次世界大戦終了40周年演説の中で,「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」と訴え、ナチス・ドイツによる犯罪を「ドイツ人全員が負う責任」だと強調している。日本人にとっての過去は東京裁判であり,サンフランシスコ平和条約以降の日本の「戦後処理」である。

今日もテレビニュースを見ていて,1965年の「日韓基本条約」という言葉を何度も聞いた。本来はサンフランシスコ以降の流れ(冷戦や日米関係,東アジア経済)の中で理解しなくてはいけない日韓関係が,コメンテーターの勝手な感想で潤色されているのが気になった。2学期以降の授業を頑張らなくてはという気持ちになった。

さて,皆さんは皇室が靖国神社を参拝しない点についての賛否を,自分の言葉で丁寧に説明できますか。

「韓国大統領『外交的解決の場を』

本日の東京新聞夕刊から。
ちょうど2週間前の日本史演習の期末考査で,韓国内の徴用工裁判判決を巡って,日本側が輸出規制を検討しているとのニュースを元にした出題をしました。覚えているでしょうか。その時点から話は大きく進展していき,見出しにある「日本経済に被害」と,報復合戦の様相を呈してきました。

テレビのニュース映像を見る限り,今回は日本政府側の汚点が目立ちます。領土や武力衝突などを巡って政治的に激しく対立しようと,貿易や文化交流,庶民の往来は保障し,決定的な衝突を避けるのが外交の基本である。日韓だけでなく,日中,米中,台中関係もそのような大人の配慮で動いてきた。政治的な主張を経済的な圧力で実現しようとするのは,欲しい物やこだわりがある時に,駄々をこねて欲求をゴリ押ししようとする子どもの論理である。

米大統領トランプ流のB級外交を真似たのか,参議院選挙で益荒男ぶりな外交姿勢をアピールしたいのか,政府の意図はよく分からない。しかし,両国にとってウィンウィンな経済の発展という共通の利害関係を疎かにしてしまうと,ある意味コップの中の嵐に過ぎない政治家同士の衝突が,退っ引きならない国民同士の軋轢となって跳ね返ってきてしまう。こういった外交のイロハは儒家の論語や,司馬遷の史記,十八史略などでも寓話を交えて繰り返し語られていることである。

やはり,今回の話は,1965年の日韓基本条約締結の背景や歴史的流れを押さえておかないと,浅薄な理解に留まってしまう。2学期に自信を持って教えられるように,この夏休みしっかり勉強します!

「旧陸軍毒ガス詳報 確認」

本日の東京新聞朝刊に,日中戦争で日本陸軍が毒ガス兵器を使用した証拠が見つかったという記事が掲載されていた。
記事によると1939年の7月に首都北京のある河北省の西にある山西省で毒ガスを使ったとのこと。しかし,これまではっきりとした証拠(証言はたくさんありますが)が見つかっていなかったので,教科書でも陸軍が毒ガスを使用したとはっきりとは明言していません。

1939年7月というと,日中戦争が始まる盧溝橋事件からちょうど2年後にあたり,細菌兵器が使用されたノモンハン事件と時期が重なっています。陸軍の毒ガス兵器開発は満州に拠点がおかれた関東軍防疫給水部本部,通称731部隊と呼ばれた秘密組織の管轄にありました。

話は飛びますが,先日東京・武蔵村山市の国立感染症研究所で,アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱など5種類の危険性の高いウイルスを輸入し研究分析するとの発表がありました。地元住民の説明会でも市民から病原菌が漏出してしまう危険が指摘されましたが,ウガンダやコンゴ民主共和国の人たちの命を救う成果を期待したい。この国立感染症研究所はかつて,国立予防衛生研究所と呼ばれており,731部隊の人脈が受け継がれている組織です。

科学(化学)技術は否応なく正と負の両面を持ち合わせています。ここ数日,米国・欧州に対抗して,イランが原発の材料であるウランを基準を超えて濃縮させています。原子力発電と原子爆弾は同じ技術の延長線上にあります。国民生活の安定をもたらす原発と国民生活を破壊する原爆はヤヌスの鏡です。
現在の国立感染研究所は厚生労働省管轄の全く疑いのない国の組織です。しかし,エボラ出血熱のワクチン研究と細菌兵器開発が同じ線上にあるという事実だけは心のどこかに留めておきたい。