月別アーカイブ: 2018年8月

『超高速!参勤交代 リターンズ』

土橋章宏『超高速!参勤交代 リターンズ』(講談社文庫 2016)を一気に読む。
前作『超高速!参勤交代』の続編で多少のちぐはぐ感は残るが、今作もテンポよく、登場人物のキャラクター設定も上手く、途中でページを繰るのを止められなかった。
忍者同士の迫力ある戦闘やドリフを連想させるコミカルなシーン、お色気場面も用意され、更に、いささかテレビドラマ仕立てのキャラを思わせる徳川吉宗(暴れん坊将軍)や大岡忠相(大岡越前守)までも登場し、これまた中年世代を引きつける

また、明暦三年(1657年)の大火以来、現在まで江戸城の天守閣は消失したままとなっているが、これは会津藩初代藩主の保科正之が「天守を再建する費用があるなら焼け出された庶民救済にまわせ」と指示をしたからだと言われている。そうした幕閣の最高権力者であった保科正之と、今作でも悪の限りを尽くす老中松平信祝が対比されている点なども面白い。

本作で解説されていたわけでないが、武士は武士という仕事をおいそれと辞めることができない封建社会制度や、一度も将軍を出すことがなかった徳川御三家の一つである尾張家側の、御三卿を創設した吉宗に対する恨みなどが背景となっている。また、荻生徂徠(古文辞学・蘐園塾)の『政談』(吉宗に献策されている!)の中にある理想的な「武士帰農論」をもテーマ(?)にしており、日本史好きの生徒は深読みして楽しめるのでは。

本日の飲み会で出た情報

忘れないうちに
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川口夜間中学

全国コミュニティ・ユニオン連合会

日本環境教育フォーラム

認定NPO法人カタリバ

川嶋直・中野民夫『えんたくん革命』(みくに出版)

川嶋直『KP法』(みくに出版)

全臨教

『風の中の櫻香』

内田康夫『風の中の櫻香』(徳間書店 2010)を読む。
奈良県斑鳩町の法隆寺の東隣りにある中宮寺を舞台に複雑な人間関係が交錯する。中宮寺にある木造菩薩半跏像や、名古屋市千種区にある愛知専門尼僧堂という尼僧を養成する学校など、国宝や歴史文化に纏わる施設も登場し、浅見光彦ワールドを堪能できた。
久しぶりの推理小説であったが、気分転換に良い。

『私が弁護士になるまで』

菊間千乃『私が弁護士になるまで』(文藝春秋 2012)を読む。
タレント本のつもりで気軽に読み始めたが、新司法試験の紹介や司法修習の舞台裏、受験勉強に向けたモチベーションの維持など、かなり真面目な内容となっている。会社を辞め、初受験の司法試験に落ち、かなり追い込まれた状況の中でいかに自分をコントロールしていくか、当時の気持ちを含めて丁寧に書かれており、受験生にもお勧めしたい。また、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の8ヶ月間に渡る司法修習は、一司法修習生の立場で書かれており興味深かった。

『永徳と山楽』

土居次義『永徳と山楽:桃山絵画の精華』(清水書院 1972)を少しだけ読む。
狩野永徳は、室町時代に大和絵の技法を取り入れ狩野派を大成した狩野元信の孫にあたり、日本美術史を代表する人物である。唐獅子図屏風』や『洛中洛外図屏風』『聚光院障壁画』などで知られる。しかし、永徳がその生涯において最も精魂を傾けて制作にあたっと思われる安土城、大阪城、聚楽第の諸城の障壁画はみな不幸にして隠滅してしまっている。
狩野永徳の功績は弟子である狩野山楽の作品によるところが大きい。狩野山楽は永徳と血が繋がっているわけではなく、永徳に弟子入りしてから、永徳の画法を忠実に学び、多くの作品を遺している。漢文の抑揚形のように、「山楽でさえあれだけの素晴らしい作品を描いたのだから、まして師である永徳はなおさらだ」という評価がなされているようだ。