土橋章宏『超高速!参勤交代 リターンズ』(講談社文庫 2016)を一気に読む。
前作『超高速!参勤交代』の続編で多少のちぐはぐ感は残るが、今作もテンポよく、登場人物のキャラクター設定も上手く、途中でページを繰るのを止められなかった。
忍者同士の迫力ある戦闘やドリフを連想させるコミカルなシーン、お色気場面も用意され、更に、いささかテレビドラマ仕立てのキャラを思わせる徳川吉宗(暴れん坊将軍)や大岡忠相(大岡越前守)までも登場し、これまた中年世代を引きつける
また、明暦三年(1657年)の大火以来、現在まで江戸城の天守閣は消失したままとなっているが、これは会津藩初代藩主の保科正之が「天守を再建する費用があるなら焼け出された庶民救済にまわせ」と指示をしたからだと言われている。そうした幕閣の最高権力者であった保科正之と、今作でも悪の限りを尽くす老中松平信祝が対比されている点なども面白い。
本作で解説されていたわけでないが、武士は武士という仕事をおいそれと辞めることができない封建社会制度や、一度も将軍を出すことがなかった徳川御三家の一つである尾張家側の、御三卿を創設した吉宗に対する恨みなどが背景となっている。また、荻生徂徠(古文辞学・蘐園塾)の『政談』(吉宗に献策されている!)の中にある理想的な「武士帰農論」をもテーマ(?)にしており、日本史好きの生徒は深読みして楽しめるのでは。