月別アーカイブ: 2014年5月

『アマゾンで地球環境を考える』

西沢利栄『アマゾンで地球環境を考える』(岩波ジュニア新書 2005)を読む。
大学のレポートの参考資料として必要な部分だけ卒読した。
アマゾンは地球上に存在する三つの熱帯雨林の一つである。三つの熱帯雨林とは、アフリカのコンゴ川に流域に存在する熱帯雨林、東南アジアに広がる熱帯雨林、もう一つがアマゾン川流域を中心とするアンデス山脈西方地域とメキシコにまで広がる中南米の熱帯雨林を指す。このうち中南米の森林面積は6億9700万ヘクタールで最も広く、2番目の東南アジアの2倍近い。また、これらの3つの熱帯雨林の全面積は、地球上の全陸地面積の7%を占めるにすぎないが、この地域に生存する植物体の量は、地球上の陸上植物の41%、生産量では30%を占めている。
そのため、アマゾンの熱帯雨林破壊は南アメリカの一地域だけの問題ではなく、地球環境に大きく関わるという点について生物学的・地球科学的見地から分かりやすく解説してあった。エルニーニョ現象との関係や多様な生物環境から生み出される300以上の薬用植物や遺伝子資源など多岐にわたるものである。

さあーっと読み流したが、アマゾンの熱帯雨林の自然の重要性と、その開発・保全を巡る人的・社会環境の貧困さはよく理解できた。

『ごめんあそばせ 独断日本史』

杉本苑子、永井路子『ごめんあそばせ 独断日本史』(中公文庫 1988)をぱらぱらと読む。
直木賞作家の二人が、飛鳥時代における蘇我氏の功罪に始まり、平安、鎌倉、室町、安土桃山、江戸時代に至る人間関係や史実のモヤモヤをバッサリと断じている。
かなり細かい内容に踏み込んでいるので、ほとんどついていくことができなかったが、道長の気配りや、政治を分かっていない平安貴族の話など興味深かった。

『いのちの戦場』

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地上波で放映された、フローラン・シリ監督『いのちの戦場 -アルジェリア1959-(L’ENNEMI INTIME)』(2007 仏)を観た。
高校・浪人時代に世界史を勉強した記憶を引き出すに、1955年のアジア・アフリカ会議以降、比較的平和裡にアフリカ諸国が独立していったという印象が強い。しかし、チュニジアやモロッコが穏健に宗主国のフランスからの独立を果たしたのに対し、アルジェリアは130年続いた植民地支配の結果、複雑に利害関係が絡まっており、独立戦争は7年も続き、100万人の犠牲を出しての独立であった。アルジェリア側にもフランス軍に従事するものもおり、ドゴール・フランス政権はアルジェリア人同士の反発を上手く利用するが、結局は破綻を来たし、アルジェリア独立が果たされる。

疲れが出てしまい、文章が変

『灘校・伝説の国語授業』

橋本武『灘校・伝説の国語授業:本物の思考力が身につくスローリーディング』(宝島社 2011)を読む。
関西の有名進学校である灘中学校で50年に渡り、一冊の文庫本『銀の匙』を3年かけて読み解く授業を行い、公立高の滑り止めだった灘校を東大合格日本一へと導き、日本のリーダーたちを育てたという「伝説」教師の手による授業入門書である。
橋本氏は、中勘助の『銀の匙』を題材に授業を展開するにあたって、次の点を大切にしている。

  1. 寄り道する
  2. 追体験する
  3. 徹底的に調べる
  4. 自分で考える

本文中に出てくる意味の取りにくい言葉に注目して、日本古来の文化や言葉の世界へと「寄り道」をして、一つ一つの言葉の意味を深く拡げて調べさせる。また、凧揚げをしたり、駄菓子を食べたりして物語の世界を味わう。最後にタイトルを考えたり、ぴったり200字に要約したりして、自分のものにするまで読み込むという、トコトンこだわった授業内容である。

指定の教科書と定期考査が課せられる一般の公立高校でそのまま実践していくことは難しいが、言葉にこだわって脱線していく展開は参考となることが多かった。

橋本氏は以上のような3年間にわたるスローリーディングを実践していくことで身につく力をつぎのようにまとめている。

  1. 語彙が増える
  2. 自分で考える力がつく
  3. 文章力が向上する
  4. 記憶力がアップする
  5. 調べる力がつく
  6. 言葉に敏感になる
  7. 読み解く力が強くなる
  8. 好奇心が刺激され、学ぶことが楽しくなる

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』

地上波で放映された、成島出監督、半藤一利原作、役所広司主演『聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-』(東映 2011)を観た。
山本五十六氏の生き様だけでなく、日独伊三国同盟成立や日米開戦をめぐる対立など歴史的背景も理解することができた。
海軍にいながらも戦争には反対であった山本五十六氏の人物像を一貫して描く。日米戦争の悲惨な末期を予期しながらも、日米開戦の責任者としての「軍人魂」を捨てきれない山本氏の苦悩についても触れている。
「目と耳と心で世界を見ろ」というメッセージが印象的であった。