月別アーカイブ: 2020年1月

『おらおらでひとりいぐも』

第54回文藝賞受賞作・第158回芥川賞受賞作、若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社 2017)を読む。
不思議なパワーのある作品であった。標準語による説明文章と遠野方言による会話表現が巧みに入り混じる。
あえて表現するなら、死に向かいゆく青春小説であろうか。寡婦となり、何事にも老いを感じるようになった桃子さんが、思春期特有の自己分析、自我の獲得を追体験する。

「ロシア語学習者半減」

本日の東京新聞朝刊に、30年前に比べロシア語学習者が半減したとの記事が掲載されていた。ソ連が崩壊してから共産主義陣営だった国が、ロシア語から自国の言語教育に力を入れるようになり、ロシア語を学ぶ者が激減したとのことである。

『上海迷宮』

内田康夫『上海迷宮』(徳間文庫 2007)を読む。
2004年に刊行された本の文庫化である。
ちょうど中国経済が爆発的に伸びてきて、「世界の工場」と称されるようになった2000年代初頭の上海の急激な開発が殺人事件の背景となっている。

古い町や風景、そこに息づく人情なども切り捨てながら、国家主導で進んでいく中国の経済成長を、日本の高度経済成長に擬えつつ、懐疑的に描写しているのが印象に残った。

文庫で400ページ弱の中編小説なのだが、読むのにやたら時間がかかってしまった。年末年始にゆっくり休んだので、気持ち的には落ちついているのだが、どこかで疲れが出ているのであろうか。