月別アーカイブ: 2009年2月

今朝の東京新聞朝刊

今朝の東京新聞朝刊に、昨年の水泳界を席巻した英スピード社の「レーザーレーサー」に追いつけ追い越せと、ミズノやデサントなどの国内企業の競争開発の模様が報じられていた。新しい国際基準に合わせ、すでに「レーザーレーサー」の素材を研究した日本メーカーが新製品を開発し、国内大会でも日本新をマークしているそうだ。
高度経済成長期の自動車メーカーの開発競争のようなニュースである。一定の規制がある中でのスペック競争は日本メーカーの得意とするところなので、近いうちに「レーザーレーサー」を凌駕する国産水着が現れる日も近いであろう。

『殉死』

司馬遼太郎『殉死』(文春文庫 1978)を読む。
明治天皇の大葬の礼の号砲とともに「殉死」した乃木希典の生涯を、司馬遼太郎独特の史観を通して描く。
乃木希典というと日露戦争で活躍した「軍神」というイメージしかなかったが、本書の中で作者は、乃木を軍人としては無能な人物で、陽明学の山鹿素行の著書を愛読し、明治の近代の時代の中で、原理主義的な武道精神を持って生きた変人として描く。軍服を着たまま寝たり、西南の役で軍旗を奪われたことを生涯悔いたり、軍事作戦の失敗をすべて自己責任として引き受け自殺を希求するなど、その奇行ぶりは、むしろ日本人の「判官贔屓」な気持ちを揺さぶり続ける。今で言うところの王貞治のストイックぶりと長嶋茂雄の人間性が合わさったような存在だったのだろう。
「司馬史観」とも称される、歴史上の人物に敬愛を込めて語るスタイルに改めて興味を抱いた。

『チェンジリング』

Changeling_movie

子どもをお風呂に入れてから、いそいそと、クリントイーストウッド監督・アンジェリーナ・ジョリー主演『チェンジリング』(2008 米)を観に行った。
「ヤフー映画」のホームページのランキングで評判が良かったのを頼りに、何の情報もないまま観た。1930年代のアメリカで実際にあった児童連続殺人事件を映画化したものである。ある日突然息子を誘拐された女性につけ込んで、市民やマスコミの支持を得ようと警察が偽の息子を女性に託すことがから物語は始まる。そこで異議申し立てをした女性を精神病院に送り込むのだが、事件は意外なところから急展開を見せる。
ここしばらく、色々とストレスを抱えているので、スクリーンを観ながらも、あまり話の没頭できなかった。しかし、そうした雑念を吹き飛ばすほどに、主演のアンジェリーナ・ジョリーの演技が光っていた。子どもを連れ去られた母親の悲しみだけでなく、不正を糾し真実を追究しようとする正義の心、そして、80年近く前の時代にも関わらず一人でたくましく生きていく女性の強さを巧みに演じていた。
惜しむらくは、もう少し平穏な精神状態で観たかった作品である。

『かまいたち』

宮部みゆき『かまいたち』(新潮文庫 1996)を読む。
1992年に刊行された単行本が文庫化されたものである。江戸を舞台にした彼女の初期の短編集である。サスペンス色の強い表題作の『かまいたち』、人間の欲望にふれた『師走の客』、そして超能力をテーマにした『迷い鳩』『騒ぐ刀』の4編が収められている。初期の作品ということであるが、緻密なプロットで非の打ち所がない。
あえて、評するならば、「シルバニアファミリー」のような箱庭的な世界の中で、複雑な人間関係のドラマが展開されると言うべきか。

『六番目の小夜子』

恩田陸『六番目の小夜子』(新潮社 1998)を読む。
最近話題になっている作家の本だったので手に取ってみた。代々の生徒会に伝わる学校の怪談をテーマにしたホラー小説である。
解説の中で綾辻行人氏はこの小説を評して次のように述べている。たった五文字でこの小説のうまく評している。

“予感”の怖さ、とでも表現してみようか。静かで透明感のあるさまざまな“予感”に全編が覆い尽くされていて、それが読む者にもえも云われぬ不安と恐怖を抱かせるのである。