月別アーカイブ: 2019年9月

『ビブリア古書堂の事件手帖 3』

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 3:栞子さんと消えない絆』(メディアワークス文庫 2012)を読む。
第2巻に続けて一気に読んだ。ライトノベルのような体裁の作品であるが,少しずつ謎の女性栞子さんの正体が明らかになり,主人公の青年の心理と同じく徐々に栞子さんに惹かれていく,そのもどかしさが味わい深い。
次回作もすぐに読んでみたい気もするが,少し時間を置こう。

「サウジ,観光ビザを発給開始」

本日の東京新聞夕刊に,サウジアラビアが観光客を大幅に受け入れるとの記事が掲載されていた。2018年のデータで,日本を訪れた外国人はビジネスも含めて年間で3100万人である。一方,サウジでは2030年に年間1億人の観光客を目指すという。

地理Aの授業で扱いましたが,こうした開放政策の背景には,オイルマネーに依拠する中東諸国の経済政策の変更が影響しています。サウジは数年前までは原油の産出量が世界第1位で,原油価格にも大きな影響力を持っていました。しかし,現在はシェールオイルによって米国が産油国の筆頭となり,世界の原油価格を左右するまでになっています。産油第2位のサウジといえど,原油だけに頼った政治経済政策を行うことができません。

石油や石炭などのエネルギー分野は,地理でも面白いところではありませんが,押さえておくと国際政治や経済が見えやすくなります。受験の有無を問わず,しっかりと学んでください。

「外国籍の1万9654人不就学」

本日の東京新聞朝刊に,全国で6歳から15歳の年齢の外国籍の子ども2万人が学校へ通っていないとの記事が掲載されていた。義務教育を管轄する文科省がこうした調査を行い,報告する意義は大きい。
埼玉県でも700名を超える児童生徒が公立の小中学校へ通っていない。本国の中学校を卒業していても,学齢期の生徒ならば小中学校に通って勉強できるので,まずは地元の市役所に相談してほしい。皆さんの周りにもこのような生徒がいたらご連絡ください。

大学の教職課程で「教育基本法」を学びます。日本史の授業でも扱いましたが,戦後の教育の根幹を定めた法律です。日本国憲法とセットで制定されました。
その第4条に「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とあります。国籍はこの中の「社会的身分」に相当します。国籍や保護者の立場の如何を問わず,十全な教育環境を整備していくことが,公立学校の果たす義務となります。

『パリを自転車で走ろう!』

伊藤文『パリを自転車で走ろう!』(グラフィック社 2010)を眺める。
ネットでタイトルだけを見て購入した本である。著者は自転車とは全く縁がない料理ジャーナリストで,パリ市内20区のグルメやコスメ,ファッション,おしゃれな建物などをひたすら紹介するだけの本である。
ヴェリブと呼ばれる,2007年から始まったパリ市内の自転車貸出システムが紹介されているが,本文とはほとんど関係がない。
本の内容とタイトルがかけ離れているのは,小説では構わないが,ノンフィクションでは控えていただきたい。

「外国人のための高校進学ガイダンス」

本日,越谷で開催された「外国人のための高校進学ガイダンス」にアドバイザーとして参加してきました。かれこれ10年以上関わっているイベントです。

埼玉県の東部地区でも外国籍の生徒が増えています。中学校までは義務教育なので,日本語能力の如何を問わず,地元の公立中学校に通うことができます。しかし,公立高校に進学するには必ず高校入試を受けなくてはならず,日本語が出来ないと授業についていくことができなくなってしまいます。そこで生徒の日本語能力や保護者の考えも加味しながら,高校進学について通訳を介して説明していきます。

現在,埼玉県では12校の高校で,日本に来て3年以内の生徒を対象とした「外国人特別選抜入試」を行っています。埼玉県東部では草加南高校,三郷北高校,川口東高校などです。また,吉川美南高校や越ヶ谷高校には定時制が設置されており,日本語を学びながら勉強する場もあります。一人ひとりの将来の目標などを聞きながら,勉強方法などを伝えていくのですが,高校生の2者面談や3者面談のような雰囲気で,気疲れもしますが楽しい時間でした。

しかし,高校と大きく違うのは,外国籍の生徒なので,在留資格が関係してくることです。家族状況や日本に来た年齢でも変わるのですが,日本の高校を卒業し,その後進学や就職をすることで,日本に永住できる権利を得ることができます。また,ネパールやパキスタンなどは日本と中学校の制度も大きく異なっているので,すんなりと日本の高校受験の資格が得られるわけではありません。

今後ますます,日本に住む外国籍の方が増えていきます。そうした中で,このような説明会は,高校教員として関わることができる国際交流のひとつだと考えています。通訳なしで直接生徒に語ることができれば,もっと親身に相談に乗ることができるのですが,その点が残念でなりません。今回,中国語,タガログ語,スペイン語,ポルトガル語,英語を母語とする生徒が参加していました。
皆さんも,ぜひこれらの言語を学んで,いつか一緒に説明会に参加しましょう。