月別アーカイブ: 2008年7月

『たった100単語の英会話』

オーストラリアでの英語の勉強の基礎として、晴山陽一『たった100単語の英会話』(青春出版社 2002)を辞書代わりに読んだ。
日常会話で使う最重要動詞10単語(come、get、give、go、have、keep、let、make、put、take)を中心に、元来の言葉が持っている機能の解説や具体的な使用例が分かりやすく書かれている。ちょうど現在の自分のレベルに合っており使い勝手が良かった。

  • get:「ある状態に達する、今までと違う状態になる」
  • take:「手を伸ばして取る、自分の世界に取り込む」
  • have:「持っている」、「手に入れる」、「使役」
  • give:「Aの世界の一部を(ただで)Bの世界へ移行する」
  • keep:「Aの世界で、ある状態が続く」、「Bの世界の、ある状態を変化させないで保つ」
  • make:「何か新しい物事を作り出す」、「何かを作る以上、そこには意志が働いている」
  • let:「〜が自由にしたいようにさせる」
  • put:「物をある場所に据える」、「物の居場所を定める」
  • come:「近づいて現れる」
  • go:「行く」、「至る」「進む、進展する」

本物の銃

本日はオフだったので、ゴールドコーストへ出掛けた。
ゴールドコーストの中心地サーファーズパラダイスに、オーストラリアンシューティングアカデミーという観光客向けに実弾の射撃体験ができる施設へ行ってみた。ちょっと値段は張ったが、ものは試しに45口径のセミオートピストルを28発、映画ダーティーハリーでお馴染みの44マグナムリボルバーを24発撃ってきた。
映画やゲームセンターと違って、本物の拳銃は一発撃つごとに、目に見えぬ速さで薬莢が飛び出て、強烈な反動と火薬の煙が舞い上がる。一発撃っただけで、「これはおもちゃではない」と自覚させられる。10メートルほど先のターゲットの紙にぶっとい穴が一瞬で空くのを見るに、本当にこれで人が殺せるのだという「実感」が湧いてくる。実弾は全く見えず、引き金を引いた瞬間には全てが終了している。私自身日本人の平均よりは腕の力はあるだろうが、それでも暴発したら腕ごと吹っ飛んでしまうだろうという恐怖は拭えない。
人によって感じ方は様々なので、実弾を撃つということが怖いと感じるか、逆に快感と感じるかは微妙なところであろう。

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『オープンハウス』

辻仁成短編集『オープンハウス』(集英社文庫 1998)を読む。
作者の辻仁成さんの作品はデビュー作『ピアニシモ』があまりに鮮烈であったために、それ以後の作品はあまり面白いと感じていなかった。オーストラリアで読んだためもあろうか、妙に印象に残る作品だった。表題作の『オープンハウス』は自己破産し売れないモデルの居候をしている20代の男を描く。犬のエンリケやモデルのミツワ、働けば働くほど赤字な工場を経営する両親、そして行けども行けどもをその終わりのない都市の姿を通して、先の見えない生き方を描く。もう一つの短編『バチーダ ジフェレンチ』はきわめて純文学風な味わいのある作品で、フランス文学における「嘔吐感」のように、自己の他者への拒否反応をジンマシンに象徴させて描く。

次の一節がふと心に残った。

学校帰り、ふいに何処か違う街へ行ってみたくなる癖があった。家にあまり帰りたくないという気持ちが、あの頃の僕をそうさせていたのかもしれない。校門を出ると、わざと知らない道へ逸れ、家から遠ざかっていくことに一種の快感を覚えていた。今まで一度も歩いたことのない道を歩くのが好きだったのだ。毎回同じ道は絶対歩かなかった。知らない道を歩くと、不思議と自分の世界が広がっていくような気持ちになれたからかもしれない。道は無尽蔵にあり、そこには自分の生活宇宙よりもっと大きなものがあるような気がして、僕の好奇心は膨らんでいった。怖いという気持ちはまったく起こらなかった。僕は知らない道を歩くのが好きだった。

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『雁』

オーストラリアの車窓を眺めながら、森鴎外『雁』(新潮文庫 1948)を読む。
東大医学部の優秀な模範的学生である岡田と高利貸の吉造の妾となったお玉のそれぞれの片思いの恋愛が描かれている。
お互い相手のことを強く意識しながらも、身分の違いや運命のすれ違いで、窓越しの会釈だけで成就することなく終わってしまった当時の恋愛事情が、上野の不忍の無縁坂を舞台に繰り広げられる。ちょうど鴎外自身が作中の第三者「僕」をして語らしめるように、片思いの二つの物語が同時に展開している完成度の高い作品となっている。

物語の一半は、親しく岡田に交わって見たのだが、他の一半は岡田が去った後に、図らずもお玉と相識になって聞いたのである。譬えば、実体鏡の下にある左右二枚の図を、一つの影像として視るように、前に見た事と後に聞いた事とを、照らし合わせて作ったのがこの物語である。

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