月別アーカイブ: 2018年2月

『「今のBRICs」がわかる本』

財部誠一『「今のBRICs」がわかる本』(三笠書房 2008)を読む。
「今の〜」といっても10年前の本なので,ふんふんと軽く読んだ。
貿易や投資先という視点から,世界人口の4割(2017年現在,全世界76億人に対して4ヶ国で32億人弱)を超える4カ国の経済成長性や国内マーケットの購買力について統計データを交えて説明している。とりわけ,原油と天然ガスの膨大な埋蔵量と生産量を誇るロシアと「出ない鉱物はない」と言われるほどの資源大国であるブラジルの両国への刮目を促す。ロシアは共産主義こそ崩壊したものの近寄りがたい軍事国家の側面を残した古いタイプの国というイメージがあるが,実態は自由市場経済と中央集権国家の開発独裁型政治のちゃんぽんであり,最も効率の良い経済発展の道を爆走している。また,ブラジルもアマゾン川とサッカーとサンバに彩られた開発途上国というイメージが強い。しかし現在は,世界需要のおよそ500年分の鉄鉱石が眠っていると言われるカラジャス鉱山を抱える資源国の側面に加え,サトウキビの生産からバイオエタノールの精製,エタノール車の製造まで一貫して手がける,世界屈指の農業国であり工業国という側面も併せ持つ。

編集サイドの意向なのか,分かりやすく書かれているものの,なんとも味気ない文章で読んでいて楽しくなかった。もう少し作者の横顔が見られれば親しみもあっただろうに。

『原発をゼロにする33の方法』

柴田敬三編『原発をゼロにする33の方法』(ほんの木 2013)を読む。
前半では,3年前に亡くなられた柴田氏が,デモや裁判,国民投票,政治家への働きかけ,自治体へのお願い,英語での情報発信,不買運動,ライフスタイルの変更など原発ゼロに繋がるあらゆる手段を紹介する。また,後半では刊行当時反原発運動の第一線で活躍されている12人の方々へのインタビュー記事がまとめられている。

読み進めながら,あの危険極まりない原発を安全だと偽って推進できたのは教育の力が大きいと改めて実感した。何事も疑わず鵜呑みにする教育がもたらした大いなる過ちである。であるならば,原発をゼロに追い込んでいくのも教育に可能性を見いだせるのではないだろうか。著者の柴田氏は,大人のウソを見破り,将来に備えて正しい知識と感性を持ち,自分たちの未来に対し,何が大切かは自分たちで決めてゆく「原発リテラシー」を育成すべきだと述べる。脱原発に向けて,正しく日本の置かれた地形的状況,エネルギー問題,政治や経済の問題を考えていく力の養成が求められる。

3.11の直後に地元の杉並区高円寺で「反原発デモ」を決行したリサイクルショップ代表の松本哉氏は次のように述べる。

この期に及んで,まだ原発を推進しようという,とんでもない連中が国家権力の中枢にいますよね。そういう奴らを生み出してしまった世の中自体に問題があると思っていて,デモもやりにくい様な世の中になっていたりしますよね。皆が自分のやるべきことをお上に任せてきたから,結局お上が勝手に謎の利権を作り上げてしまった。そういう日本の抱える悪い構造が凝縮されて原発事故が起きたと思うんです。
この社会の雰囲気を変えないと,仮に原発の問題が解決したところで,他の原発じゃない原発のようなものが,いくらでも出てきて,毎回その度に大規模な反対運動をしなきゃいけなくなります。巨大なデモをやるのもキリが無いし,毎回デモなんてやりたく無いじゃ無いですか。だから,もうちょっと,日本の異様な雰囲気,というか,謎のムラ社会を壊さないと,と,それをすごく思っているんです。
だから原発はもちろん関心があるんですが,今の時点では反原発活動というのは今いちピンと来ない。もっと色んな文化とか,色々な生き方をごちゃ混ぜにして,ちゃんと自分の人間的な感性を取り戻す,それをやっていかないと,この社会は終わるんじゃないかという危機感が,今,大きいですね。どっちかと言ったら。
一番大事にしたいのは自治。自分たちで自分たちのことをちゃんとやっていくという。それは町づくりもそう。今,モラルすら全部上から決められる世の中じゃ無いですか。そこまで行ったら,「自分たちが何もしませんよ」と放棄して全部人まかせにしちゃってる様なものです。そこが根本的な問題のような気がしますね。

《本書で紹介されている反原発運動情報》

 

『アタシはバイクで旅に出る。』

国井律子『アタシはバイクで旅に出る。:お湯・酒・鉄馬 三拍子紀行○1』(エイ文庫 2002)を読む。
ハーレーダビッドソン・スポーツスターで,東京から1泊2日で往復でき,温泉と日本酒を堪能できる旅を,写真と軽妙な文体で紹介する。毎回お決まりなのか,可愛らしい国井さんの温泉に浸かるサービスカットが掲載されている。

日本酒は全国どこでも出来るものだと思っていたが,酒造りには伏流水と良質の米が不可欠だということを初めて知った。ネットで調べたところ,伏流水とは,山地に降った雨や雪が地表を伝って河川へと流れ着き、川底から地中へと染み込み、地下に取り込まれる水のことを指す。地下に取り込まれた水は、地層に沿って流れている間にゆっくりと濾過され、土壌に含まれるミネラル類を吸収し、酒造りに適した水質になるとのこと。
つまり日本酒の名産地は,山奥でも平地でもなく,扇状地や火山の山麓に近いところに偏在する。そう考えるとこの本で紹介されている埼玉県・秩父,栃木県・芳賀郡,長野県・小布施,青森県,静岡県・焼津,福島県・会津の名酒のいづれも地域的条件を満たしている。

ぶらっとサイクリング


午前中浦和に所用があり,終了後目的もないまま自転車で国道17号を走った。荒川で少し休憩する。
今度は風まかせに荒川沿いを走ったが,冬用の重いブーツだったので,小気味よくペダルを回すというわけにもいかず,ノロノロとあてもなく進む。


川口市内で道に迷い,さんざん行ったり戻ったりうろついた挙句,気の向くままに東京外環自動車道,国道298号沿いの道を走った。車では何度も走ったことがあるが,自転車で走ると改めて,埼玉東南部では珍しい激しいアップダウンに気付かされる。ちょうど外環のあたりが縄文海進の頃の海岸段丘に位置しており,北側は大宮浦和台地と呼ばれ高台になっているが,南側は奥東京湾と呼ばれた海の底であった。国道沿いのつまらない風景が続く脇道ではあるが,その成り立ちを考えると面白い。

銚子ジオパーク

香取神宮の参拝の後,銚子に向かう。まずは犬吠埼を目指す。

銚子電鉄の犬吠埼駅に車を置いて自転車で少し走ってみた。激坂もあり,折りたたみのフロント16インチのアルブレイズではちと荷が重い。


東日本大震災の風評被害で2012年4月に倒産した「グランドホテル磯屋」の前で。波が打ちつける風光明媚な場所にあるのに。


銚子ジオパークを構成する千騎ケ岩,犬岩,屏風ヶ浦の様子。風が強く,写真だけ撮ってすぐに車の中に退散した。


屏風ヶ浦が見える銚子マリーナのすぐ裏手に,何かと話題の加計学園が経営する千葉科学大学があった。大学というよりは遠目には水産加工会社の赤レンガ倉庫のようだった。学食で休憩したのだが,夏には海水浴の観光客を相手にしているようで,定食とラーメン,カレー,アイス,ドリンクバーなどがメニューに並んでいた。確かに平日は学生食堂として,休日は観光客目当てにすれば一石二鳥である。加計学園もなかなかうまいロケーションを考えたものである。


最後に地球の丸く見える丘展望館・愛宕山に立ち寄った。展望館は300円の入館料が掛かるので,周りの風景だけを味わった。半島から突き出た拳のような岬の中心に位置する標高73.6mの小さな山で,地球うんぬんと称するには首を傾げてしまうが,波の侵食作用で周囲を削り取られたという成り立ちを考えると,まあそんなものかと思う。