月別アーカイブ: 2009年9月

パンフレット研究:神奈川大学

神奈川大学のパンフレットを読む。
1928年米田吉盛によって創設された「横浜学院」が母体となって、2008年には創立80周年を迎えた伝統校である。また、入学金・委託徴収料を除く初年度納付金を全て免除した上に、文系自宅通学者で400万円、理系で自宅外通学者には720万円を給付する給費生試験を、数十年にわたって実施していることでも有名である。
東横線白楽駅から徒歩13分という横浜キャンパスには法学部、経済学部、外国語学部、人間科学部、工学部の6学部が置かれている。特に法学部は法学科と自治行政学科の2学科からなり、カリキュラムも充実しており、就職状況も良い。また、語学や教養科目などは全学部統一で行なっている。狭いキャンパスなので学部の垣根を越えた一体感があるのだろう。サークル活動もかなり盛んなようである。
また、1989年には東海道本線の平塚駅からバスで35分、また小田急線の秦野駅からもバスで25分という辺鄙な山の中に湘南平塚キャンパスを開設し、経営学部と理学部が設置されている。広大なキャンパスなので、野球場や陸上競技場、サッカー場、テニスコートなどスポーツ施設が充実している。しかし、こちらの方は横浜キャンパスに設置されている学部学科の内容と重複する部分が多く、学部の理念が感じられず、バブルで金が余っていたので作りましたといった雰囲気がパンフレットから漂ってくる。
また、大学の特色を出そうと、スポーツ・音楽推薦入試が実施され、箱根駅伝で有名な陸上競技部や女子サッカー部、レスリング部、吹奏楽部など16の強化部で募集しており、2009年度は151名が入学している。

パンフレット研究:跡見学園女子大学

人文学科とコミュニケーション文化学科、臨床心理学科の3学科構成の文学部と、マネジメント学科と生活環境マネジメント学科の2学科構成のマネジメント学部の2学部からなり、4000名弱の学生が在籍する中規模校である。
歴史は古く、創立者跡見花蹊が大阪中之島の実家の「跡見塾」の塾主になった安政6(1859)年にまで遡るが、直接には1875年に東京神田猿楽町に創設された跡見学園を起源とする。1965年に埼玉県新座市に「跡見学園女子大学」として開学し、文学部が置かれ、2002年にはマネジメント学部が設置されている。そして2008年には本部のある茗荷谷キャンパスが整備され、1・2年次は新座で、3・4年次は都心で学ぶ環境が整備されている。
しかし、新座キャンパスが嫌われたか、伝統に胡座をかいてしまったのか、臨床心理学科以外はほぼ全入状態である。カリキュラムを見ると、どの学部学科も必修科目が少なく、数十もの選択科目から、コースやモデルに沿って自由に選ぶ形になっている。「読み書き算盤」だけでなく様々な学問に通じた創立者の精神を生かし、大学全体で「リベラル・アーツ」の重視を謳っているのだが、どうもそれが裏目に出ているようである。臨床心理学科以外、幅広く学ぶだけになっており、将来の資格や就職に計算高い女子生徒たちにとって魅力が感じにくい大学になってしまっている。

パンフレット研究:杉野服飾大学

いわゆるドレメ式洋裁教授法を唱えた杉野芳子が創立した杉野芳子ドレスメーカースクールを母体とする。1950年に杉野学園女子短期大学として開設され、65年に4年制の杉野女子大学となり、2002年に現校名に改称し、男女共学制に移行されている。
JRや東急目黒線、地下鉄三田線、南北線が通る目黒駅から徒歩3分の好立地にあるので、神奈川や千葉、埼玉からの通学も便利である。
ドレス制作や日本人による初の本格的なファッションショーの開催を手がけた創立者の思想がよく受け継がれており、日常の服飾ではなく、流行の最先端をいく芸術家の養成という側面が強い。
1・2年生は全員が共通にデザインやパターン、縫製、裁断などの基礎を学ぶことになる。教養科目や選択科目は少なく、専門学校のような実習中心のカリキュラムを取っている。そして3年次からは、モードクリエーションコース、先端ファッション表現コース、感性産業デザインコース、アートファブリックデザインコース、ファッション文化論コース、ファッションビジネス・マネジメントコース、ファッションプロダクトデザインコースの横文字だらけの7つの専門コースに分かれていく。基礎的な実習がしっかりしており、どのコースに進んでも、一通り自分で企画から制作、販売まで一貫して手がけることができる力を養うことができる。
一般教養科目の中に「考古学概論」なる授業がポツンと置かれているのが印象に残った。

パンフレット研究:淑徳大学

1892年創立の淑徳女学校を起源とし、1965年に社会福祉学部(現総合福祉学部)の4年制単科大学として発足した新しい大学である。
96年には埼玉県三芳町に国際コミュニケーション学部が新設され、07年には新たに国立病院機構千葉東病院の敷地内に看護学部が開設されている。そしてさらに2010年には、フィールドワークに重点を置いた社会学部的な要素の強いコミュニティ政策学部の開設が予定されている。
千葉市内に位置する総合福祉学部は、ソーシャルワーク研究の中心校であり、カリキュラムもきちんと練られた構成になっている。また、ある程度の伝統と地域とのつながりがあるためか、県庁や市役所を始め、公立の保育所や特別支援学校などへの就職状況も良い。
一方で三芳町のみずほ台キャンパスに拠点を置く国際コミュニケーション学部は、「レクリエーション文化コース」や「スポーツ健康コース」「共生教育実践コース」など、高校生受けするようなコースと科目を揃えただけの、無思想な学部という印象を拭えない。来年度開設予定のコミュニティ政策学部も同様である。
淑徳大学は、高校3校、中学3校、幼稚園2園を経営する大規模な法人に支えられている。拡大路線を突っ走る理念なき大学経営のつけが、他の学校に回らないことを願いたい。

『大学生のためのレポート・論文術』

小笠原喜康『大学生のためのレポート・論文術』(講談社現代新書2002)を読む。
日大文理学部教育学科で教鞭を執る著者が、学部学生のために作っていたレポートや論文を書く時のルールや文献検索方法の小冊子を、本の形にまとめ直したものである。
元々日大の学生のための手引きなので、思考方法や真理追究といった、得てして形而上学的になりがちな論文術はすっぽりと省かれている。その代わりに、A4レポート用紙の余白の取り方や表紙の付け方、引用文の示し方、またレポート提出時の注意事項など、大学生の基本マナー集といった内容に紙幅が費やされている。
文章のまとめ方など、参考になるところが多かった。新書そのものが一つの論文形式になっており、これからの大学生に薦めたい一冊である。