月別アーカイブ: 2022年4月

『フード左翼とフード右翼』

速水健朗『フード左翼とフード右翼:食で分断される日本人』(朝日新書 2013)を読む。
前回の速水氏の『東京どこに住む?』を読んだばかりで、こちらも興味深い一冊となった。フード左翼とは「工業製品となった食を、農業の側に取り戻し、再び安全で安心なものに引き寄せようという人々だ。それは対抗文化の中で生まれ、商品となる過程を経たもの」と定義されている。引いては「政治運動でそれを実現することもあるが、主には消費という形で参加できる政治運動でもある」と述べられている。

速水氏は、村上春樹氏の長編小説『1Q 84』を紹介した上で、全共闘世代が農村に入って無農薬・有機野菜栽培、スローフード運動の流れで、フード左翼を論じている。つまり、学生という中間層が担った全共闘運動と有機野菜、ベジタリアンを支持する富裕層を、貧困層が参加できない都会的な左翼運動だと断じている。

無農薬・有機農法は、自然保護につながり、持続可能性に満ちた食の生産方法であると一般に捉えられている。しかし、それは極めて狭い見解であり、70億人以上の人口を支えていくことは不可能な生産方法である。今生きている人たちの食糧を無農薬で生産しようとすると、さらに大量の農地を開拓する必要があり、森林伐採や環境破壊が逆に進んでしまう。実際にアメリカでも日本でも有機農業が農業全体に占める割合は1%であり、化学肥料こそが持続可能な地球を支えているのである。

こうした現実を踏まえ、著者は理想に走りがちなフード左翼運動に対しては批判的な見解を示している。これからの高齢社会や地球的な人口爆発を見据えると、化学肥料や遺伝子組み換え食品、セントラルキッチンなど、フード右翼、フード左翼の両方の視点が必要だと述べる。

自分でも何を書いているのか、全くまとめきれていない。

『野生動物と共存できるか』

高槻成紀『野生動物と共存できるか:保全生態学入門』(岩波ジュニア新書 2006)を読む。
東京大学総合研究博物館で助教授を務める著者が、メダカに始まりツキノワグマやシカ、ラッコなどの保護について語る。著者は生態系全体を視野においており、人間が持ち込んだ外来種については厳しい姿勢を崩さない。

なぜ世界中の島々にヤギがいるのでしょう。それはじつは捕鯨のためなのです。ヤギは遠い昔に家畜となりました。粗食に耐え、乾燥にも強く、おとなしい性質なので、船に乗せて長い旅をすることもできます。このことを利用して、捕鯨業のために世界中の海洋島においていかれました。(中略)
私は小笠原の生態系保全の会議で意見を求められたとき、もちろんヤギを排除すべきだと主張しました。それが小笠原ん自然を保全するということであり、それが私たちの責任のとり方だからです。そこで私が強調したのは、ヤギを排除する以上、中途半端なことをしてはならないということです。駆除をする以上は根絶、つまりヤギの数をゼロにしなくてはなりません。というのは少しのヤギが残ると、食糧が豊富になり強い繁殖力ですぐに回復するからで、そうなるといつまでも駆除をつづけなければならないからです。

『東京どこに住む?』

速水健朗『東京どこに住む?:所得格差と人生格差』(朝日新書 2016)を読む。
東京23区といっても東部と西部で分断されており、中央線や東急線沿線の皇居の西側と下町地区の東側を比べると、現在でも「西高東低」の意識が強いことがうかがわれる。また、一口に東京23区というが、千代田区、渋谷区、港区など、皇居から5キロ圏内の都心部と、足立区や葛飾区、練馬区などの「都心郊外」では人口動態が大きく異なっている。

つい20年くらい前まではドーナツ化現象という言葉に表されるように、首都圏郊外がいわゆる東京を支えて来たが、この10数年、飲食店やICT産業を中心に職住近接の都市開発が進んでいる。

著者も紹介しているが、東京都心だけでなく、地方の中心都市など、30万人規模で半径5キロ圏内の都市生活が車を使わなくても、人々の関係が構築でき、環境にも良いという都市論となっている。大変な良書であった。

「ロシア モルドバ侵攻示唆」

本日の東京新聞朝刊に、ロシアがウクライナの西側に位置するモルドバ侵攻の計画を持っているとの報道があった。モルドバといってもピンとこない生徒が大半であろう。ルーマニアの東側にある貧しい国である。一人あたりのGDPは4,523ドル(2020年:IMF)である。

ちなみに、ざっくり一人当たりのGDP(地理ではGNIも同じ)が10,000ドル以上の上流国が70カ国ほど、3,000ドル以上10,000ドル以下の中流国が70カ国ほど、3,000ドル以下が下国が60カ国ほどとなっている。下流国のうち10カ国ほどが1日2ドル以下の飢餓状態の最貧国となっている。モルドバ国の経済は中の下といったところか。

閑話休題。人口は246万人のうち大半がルーマニア系であるが、東部のドニエストル川流域はロシア系が多い。帝国書院の地図を確認してもらえれば一目瞭然だが、モルドバの東側にはロシア産の原油を輸送するパイプラインが設置されている。ロシア産の原油や天然ガスのパイプラインがあるところに、ロシアのスパイとロシア軍の活動ありとの法則に照らすと、モルドバ東部にロシア軍が展開することは明らかである。

 

小川〜寄居〜美里〜児玉〜神川ドライブ

文化系トークラジオLifeの過去放送分「いつの間にか消えたアレ。意外とまだあるアレ。」を聴きながら、小川町からぶらっとドライブを楽しんだ。
ハローページやFAX、ソニーが嫌ったmp3プレーヤーなど、ふと自分の学生時代を思い出す「いつの間にか消えたアレ」にまつわる蘊蓄が面白かった。
「自動車の不具合はリコールなのに、コンピュータの不具合はアップデートで済まされてしまう」という自動車会社の社員のコメントが紹介され、「電気自動車の不具合はどのように扱われるのか」という指摘は鋭かった。また、「引越し蕎麦」の本来の意味など勉強になった。


埼玉県大里郡寄居町と児玉郡美里町の間にある円良田湖


秩父鉄道の路線を走る石灰石輸送用貨車。鉄オタではないが、子どもが小さい頃に買ったDVDと全く同じ車両だったので興奮した。石灰石は国産100%の資源であり、秩父はかつて海の底であり、セメントの原料である良質な石灰岩の産出地として知られている。