テレビで録画した北野武監督『座頭市』(2003)を見た。
月並みな表現だが、北野武扮する盲目の浪人である座頭市の落ち着き払った姿が〈静〉の世界を成し、心の緊張を象徴する太鼓の激しいリズムが対比的に〈動〉の世界を作り上げる。画面は暗く動きも少ないのに、効果音だけは高まっていく画面構成が印象的であった。そして最後はタップダンスという形で大団円を迎える。まさに映画ならではの手法である。
思うのだが、この作品をもしノベライズするならば、徹底した心境小説にならざるを得ないであろう。
月別アーカイブ: 2004年11月
『日本語誤用・慣用小辞典』
国広哲弥『日本語誤用・慣用小辞典』(講談社現代新書 1991)を読む。
「なおざり」なのか「おざなり」なのか、「かって」と「かつて」の違いなど、一見誤用とは分からない現代日本語について、豊富な例のもと検証を加えている。
『オレンジの壺』
先週で佛教大学の通信教育の最終試験が終わって、やっと一息ついたような日々を過ごしている。やらねばならないことはたくさんあるのだが、しばらくは読書や運動など充電期間に充てたいと思う。気持ち的なゆとりがないと次へ向かう元気も出ない。
宮本輝『オレンジの壺』(光文社 1993)を読む。
何年か本棚に眠っていた本であったが、海外を舞台した小説が読みたいと思い手に取ってみた。単行本で上下500頁近くの作品であったが一気に読んでしまった。祖父が残した日記を巡って、1920年代の第1次大戦後のヨーロッパの秘密組織の謎が段々と明らかになっていく。そしてその謎を追ってパリ、エジプトへ旅だった佐和子の人間的成長も合わせて話が展開される。雑誌に連載された小説ということだが、終わり方が何とも慌ただしく、すっきりしない作品であった。
『男の性(さが)』
梁石日『男の性(さが)』(幻冬舎アウトロー文庫 1999)を読む。
男性の性行動や性に対する偏見などを、女性の視点ではなく、男性自身の視点から学問的なアプローチを試みている。
『江戸取流「学力革命」』
高橋鍵彌『江戸取流「学力革命」』(サンマーク出版 2003)を読む。
茨城の取手にある江戸川学園取手中学・高等学校の校長による「道徳教育」や「IT教育」などオリジナルな教育実践例が分かりやすく述べられている。特に学力向上の要点を「集中力」「聞く力」と割り切って、校長による生徒全員に向けた講話の内容を一字一句漏らさないようにノートに速記させ、感想を付して3日後の朝までに提出させるという「道徳」の授業は興味深い。しかし現場で働く教員の負担は大きいようで、労務管理の厳しさを想像させる。