おおたとしまさ『男子校という選択』(日本経済新聞社 2011)を読む。
男子校の隠された実態といったバラエティ番組的な内容ではなく、全国20数校の有名男子校の取材を通して、男子生徒を伸ばすコツや男子校ならではの人間性を高める工夫が紹介されている。入試に捉われない授業内容やタフな生徒を育てるための行事など、共学校においても参考になるような指導事例が数多くあった。
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鎌倉サイクリング
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『隅田川殺人事件』
内田康夫『隅田川殺人事件』(徳間文庫 1993)を読む。
1989年に刊行された本で、バブル期の苛烈なウォーターフロント開発をモチーフにした殺人事件である。
陳腐な展開であったが、身近な場所が舞台だったので、2時間弱で最後まで一気に読んだ。
『由煕(ユヒ)』
第100回芥川賞受賞作、李良枝『由煕(ユヒ)』(講談社 1989)を読む。
雑誌「群像」(1988年11月号)に掲載された表題作の他、2編が収められている。
日本から留学した在日同胞の由煕と、下宿先の韓国の家族とのほのかな交流が描かれる。由煕は韓国の大学や家庭に馴染もうと努力するが、深夜の酩酊や人混みでのパニック、突然の中退など様々な問題を引き起こす。言葉の壁や乗り越えられない文化や歴史の溝に苦しむ主人公由煕の姿を通して、隣国同士である日本と韓国の距離感が浮かび上がってくる。最後に、遠い日本に帰ってしまった由煕との思い出の場面と、米国で暮らす親類と電話で楽しく語り合う場面が対照的に描かれる。
これぞ「芥川賞」と呼べるようなしっかりとしたテーマを持った作品であった。心地よい読後感を損ないたくないため、残りの2編は読まなかった。