投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『くたばれ!就職氷河期』

常見陽平『くたばれ!就職氷河期:就活格差を乗り越えろ』(角川新書,2010)を読む。
タイトルに「就職氷河期」とあるが、90年代半ばから00年代前半までの求人倍率が1倍を切った団塊ジュニア世代の話ではなく、採用する企業側と就職する学生側のミスマッチによる就職難となったリーマンショック後の就職について論評を加えている。

中には企業説明会や選考で企業を訪問した際に、トイレの個室にこもって社員の本音に耳を傾けるべきだとの珍アドバイスもあるが、正論ではなく企業が求める人材の本音部分が書かれていて興味深かった。

『バリケードを吹き抜けた風』

橋本克彦『バリケードを吹き抜けた風:日大全共闘芸闘委の軌跡』(朝日新聞社,1986)をパラパラと読む。
著者は日本大学全学共闘会議芸術学部闘争委員会のメンバーであり、1968年から69年にかけて盛り上がった日大全共闘運動の内部レポートである。ストライキや団体交渉、デモ、火炎瓶など過激な内容が続くが、細かい流れが多すぎて頭に入ってこなかった。

『スマホ廃人』

石川結貴『スマホ廃人』(文春新書,2017)をパラパラと読む。
今多くの人が使用しているLINEは東日本大震災をきっかけに開発を急ぎ、3ヶ月後の6月にサービスを開始している。
また、幼児にスマホを使わせるなんてという非難を耳にするが、著者はその背景に社会の不寛容さが増していると指摘する。子どもにスマホを利用させる母親たちが「周囲の迷惑にならないように」という理由を挙げていた。子どもが騒いで迷惑をかけたくないから、スマホを使っておとなしくささせている。実際「騒音」を理由に保育園建設への反対運動が起きたり、公園で遊ぶ子どもの声がうるさいと訴訟になったりすることを考えるとさもありなんという感じだ。

『〈じぶん〉を愛するということ』

香山リカ『〈じぶん〉を愛するということ:私探しと自己愛』(講談社現代新書,1999)を少しだけ読む。
専修大学の「サブカルチャー論」の授業をもとに構成されている。宮崎勤事件やニューエイジ思想、バンドブームなど現在60代となった「新人類」世代直撃の文化と人間模様について論じている。著者の本領が最も発揮された著書ではなかろうか。

「原爆作家・大田洋子を伝え続ける江刺昭子さん」

本日の東京新聞朝刊に女性誌研究家の江刺昭子さんが紹介されていた。
東京都内では昨日の夕刊に掲載されているのだが、春日部は夕刊が廃刊となったので、本日の朝刊付けの掲載となっているのが寂しい

取り上げられた江刺さんは国語国文科の先輩にあたる。29歳の時に、原爆小説『屍の街』を書いた大田洋子さんの自伝を著し、「私の最初、そして最後の仕事が『大田洋子』なのかもしれません。卒論ではないですが、ちゃんと書いたと、本人に認めてもらえたらいいのですが」と述べており、御年83歳になられた現在も文学碑の式典や被爆関連行事に参加している。

江刺さんは『にんげんをかえせ』の峠三吉や『夏の花』の原民喜と並び称される原爆作家の大田洋子に対し、「正当な評価をされてこなかった」と精力的な取材を重ねてきた。日の当たらない分野に生涯をかけてきた江刺さんの生き方もひしひしと伝わってきた。