月別アーカイブ: 2024年7月

『雪はなぜ六角か』

夏休みの10冊目

小林禎作『雪はなぜ六角か』(筑摩書房,1984)をパラパラと読む。
著者は北大の教授で、雪の結晶の第一人者であり、温度と湿度が雪の結晶に及ぼす影響を整理した「小林ダイヤグラム」なるものまである。実験レポートのような内容で、ほとんど読み飛ばしたが、実は結晶成長学という学問はニッチな分野ではなく、かなりメジャーな学問であるようだ。日本結晶成長学会第15代会長の藤岡洋東京大学生産技術研究教授の言葉を紹介したい。本書は雪の結晶だけであったが、実は様々な工業製品に関する有望な学問だということが分かった。

結晶成長学は数学・物理・化学・生物学といった基礎科学や、電子工学・機械工学・化学工学・生命工学・医学といった沢山の応用学問分野と、多くの接点や境界領域を持ちます。また、化学産業・半導体産業・電子部品産業・自動車産業・医療機器産業といった結晶成長を利用する産業界からのニーズが刺激となって、新しい結晶成長技術が次々と開発されています。したがって、この学問領域の発展には多種多様なバックグラウンドを持つ人々が集い議論を深めていく場を提供することが重要です。結晶成長学会はこの様な学術交流や産学交流を支える組織としてその役割を積極的に果たしていくべきと考えています。

また、Wikipediaで調べたところ、著者の小林さんはこの本を刊行した3年後に亡くなっている。執筆時にはすでに重い病にあったようで、あとがきの最後は次の一節で締めくくられている。

考えてみれば、(東大の船舶専攻に入れなかったが、北大での)雪作りの方がよほど楽しい人生だったかもしれない。私はやがて大学を定年になり、雪の研究は若い人たちに引きつぐことになる。そうしたら、私ははたせなかった幼い日の船作りの夢を、古い時代の帆船模型に託して生きていきたいと思っている。

『恐竜の謎』

夏休みの9冊目

平山廉『恐竜の謎』(ナツメ社,2002)をパラパラと読む。
著者は日本画家の平山郁夫氏の子息で、慶應義塾大学経済学部を卒業後、京都大学大学院地球科学研究科地質学鉱物学を専攻した異色の研究者である。現在は早稲田大学国際教養学部で爬虫類や古生物学の研究に携わっている。一体大学ではどんな科目を担当しているのであろうか。

話の内容が恐竜の生態や分類に関する話だったので、大半を読み飛ばした。一つ興味深かったのが、恐竜の絶滅に関する話である。1980年にメキシコ・ユカタン半島で隕石の多く含まれるイリジウムが見つかってから、巨大隕石の衝突による恐竜絶滅仮説が提唱されるようになった。この隕石の衝突は、広島型原爆100億発分もの衝突エネルギーがあると計算されている。衝撃によりつくられた粉塵が太陽光線を遮り、急激な気温の低下をもたらし、植物の光合成を阻害したと推測されている。また、大気中にできた化学物質により酸性雨が降ったとも言われている。しかし、爬虫類や両生類などの恐竜以外の陸生脊椎動物はほとんど変化が見られず、昆虫も白亜紀末期から8%しか絶滅していない。地層が溜まっていく速度は数千年ないし数万年の単位であるため、1000年以下の出来事は証明できないという。つまり、照明も否定もできないのである。

『銀河にひそむモンスター』

夏休みの8冊目

堀江純一『銀河にひそむモンスター』(岩波書店,1991)をパラパラと読む。
平易な文体で書かれているが、本格的な銀河に関する入門書となっている。タイトルにある銀河のモンスターとはブラックホールのことである。ブラックホールが銀河の中心にあることで、ブラックホールの超巨大な重力によって、銀河の中心には1立法光年の中に数百万個から数千万個の星が密集する。またブラックホール自体も自転しているので、磁力線が捻じ曲げられた降着円盤が存在する。そうしたブラックホールの莫大な力によって、銀河は楕円形や渦巻き型のような形で公転しているのである。
スケールが大きすぎる話であった。

『理科年表読本 気象と気候』

夏休み7冊目

高橋浩一郎・宮沢清治『理科年表読本 気象と気候』(丸善,1980)を読む。
国立天文台が毎年編纂する「理科年表」の解説本となっている。紀元前からの天文学に始まり、地球の大気や気候、雲、雨、雪、風などのしくみについて分かりやすく解説されている。

参考になったところを抜書きしておきたい。
熱帯と温帯の境目である月の平均気温が18℃は、人間の活動にもっとも適当な気温である。東京でいうと5月中旬くらいの気温(最高気温23℃、最低気温14℃)の過ごしやすい時期である。10℃は樹木が育つか否かの境の気温で、昆虫なども10℃より低いとほとんど活動できなくなる。東京で言うと3月中旬ないし11月末ごろ。−3℃は根雪になるかならないかの境の気温。

季節風は英語ではモンスーン(monsoon)と呼ばれ、アラビア語の季節を意味するマウシム(mausim)から出たと言われている。季節風は中緯度では、大陸と海洋との温度差が大きな原因となるが、ヒマラヤ山脈など東西に伸びる大きな山脈があると、冬シベリアに放射でできた寒気は低緯度に流れ出さず、強い高気圧となる。一方、アメリカ大陸はロッキー山脈のような南北に走る高い山脈はあるが、東西に伸びるものはないので、寒気はすぐに低緯度に流れ出し、強い高気圧はできない。

日本の年間雷雨日数が最も多いのは、石川・富山県と宮崎県えびの高原の40日で、ついで関東北部、美濃三河高原、琵琶湖北側、鈴鹿山脈、大分県日田地方の35日である。雷の発生はふつう初夏から盛夏にかけて多いが、日本海側では、シベリアから北西季節風が吹き付けるとき、積雲や積乱雲が発生するため、冬に多くなる。