月別アーカイブ: 2021年10月

『スペインの歴史』

川成洋著、宮本雅弘写真『スペインの歴史』(河出書房新社 1994)をパラパラと読む。
アルタミラの洞窟壁画からスペイン内戦まで、スペインの歴史が教科書風に解説されている。ブラジルを除く中南米のほぼ全ての国でスペイン語が話されているほど、スペインは知られた国であるが、世界史で登場するのは、イスラム勢力による西ゴート王国の滅亡とレコンキスタ、大航海時代のハプスブルク家のフェリペ2世、スペイン内戦くらいのものである。特に1598年にフェリペ2世がなくってからは転落に次ぐ転落であり、オランダやフランス、アメリカに戦争で負けて領土を奪われるだけの歴史である。

また、スペイン内戦は何度読んでもよく分からない。全体主義と共産主義と無政府主義の対立なのだが、途中でこんがらがってくる。

『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな!』

齋藤孝・倉田真由美『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな!』(集英社 2004)を読む。
それぞれの性を代表する形で、男女の恋愛観の違いについて語り合う。恋愛に必要なのは、話のつながりが分かる文脈力であり、硬い翻訳物を読むことで、会話においても主語や述語を探すように、話の取っ掛かりを見つけることができると齋藤氏は述べる。

『猿之助の歌舞伎』

市川猿之助『猿之助の歌舞伎』(新潮社 1984)をパラパラと読む。
現在テレビドラマで活躍されている四代目市川猿之助の叔父にあたる三代目市川猿之助さんの著書である。宙乗りや早替わり、派手な立ち回りなどエンターテイメント要素の強い歌舞伎の舞台裏をばっちりと解説している。また、著者は古典的な歌舞伎の枠を脱してオペラやアニメの世界観を取り入れたスーパー歌舞伎の創案者でもある。そうした革新の理由について著者は次のように語る。喧嘩を売るような文章が目を引く。芸術家にはこのような自尊的な物言いも時には必要だと思う。

 日本の四代古典芸能というと能狂言、文楽、雅楽、そして歌舞伎とされていますけれど、歌舞伎には他の3つと比べて厳然と異なるところがあります。それは歌舞伎が大衆芸能として成立し、その時代の人々とともに生きつづけ、今なお変革しつづけている芸能だということです。
つまり時代によって観客の好む方向が違う。その方向に敏感に反応し、先取りすることによって歌舞伎は長く、幅広い階層に支えられてきました。その点、能や文楽、雅楽などは今、純度の高い化石みたいな存在です。これ以上変えようもなく変わりようもなく、素晴らしい作品としていわば博物館入りしている。最近歌舞伎も博物館入りへの岐路に立っているとかいわれていますが、そうなったらもう歌舞伎ではありません。歌舞伎の原点は、あくまで大衆芸能として生きつづけてきた点にあるのですから。

『玉砕の戦場』

『図説|玉砕の戦場:太平洋戦争の戦場』(河出書房新社 2004)をパラパラと読む。
1942年のガダルカナル島での攻防から1945年の硫黄島での全滅まで、当時の日本の新聞記事や米軍の従軍記者による記録写真などで振り返る。サイパン島の海岸に転がる日本兵の死体の山を見るに、一度動き出した物事を止めることができない、日本の右へならえ主義が垣間見える。

『アラブのゆくえ』

岡倉徹志『アラブのゆくえ』(岩波ジュニア新書 1991)をパラパラと読む。
著者も記している通り、湾岸戦争の最中に依頼があり、イラクがクウェートに侵攻した背景やパレスチナ問題など、中東・アラブ世界の宗教や民族、大国の利害といった点について分かりやすく書かれている。後半の中東戦争やイスラエル国の成立までの長い歴史の部分はつまらなかった。気になった部分を描き抜いておきたい。

イスラムの休日(安息日)にあたる金曜日、モスクの内と周囲は礼拝に集まる人たちでたいへんにぎわいを見せます。

アリーの第四代カリフ就任には、第三代カリフ、ウスマーンの属していたウマイヤ家が反対しました。このためアリーはウマイヤ家と戦闘状態に入りましたが、661年、礼拝に行く途中、刺客の手にかかって殺されてしまったのです。

1989年の国連統計によると、イラクの総人口は1878万人で、そのうちイスラム教徒は90%をしめています。だが、この国のスンニ派は45%(イラク北部の少数民族クルド人のスンニ派20%をふくむ)で、シーア派が50%と優位に立っています。フセイン大統領らの支配階級は、もちろんスンニ派です。宗教図式的にいうと、この国では少数派のスンニ派が多数派のシーア派をおさえる格好になっていました。

現代のイスラエル国の国旗は、白地の中央にダビデの星を配し、上下にブルーの二本の線が入っていますが、上の線はナイル川を、下の線はユーフラテス川を示し、ユダヤ人の祖先たるダビデの国はナイルからユーフラテスまでの間に存在するということを意味している。