日別アーカイブ: 2017年8月11日

東京新聞国際面から

7月下旬から、サウジアラビア東部のアワミヤで、サウジ治安部隊とイスラム教シーア派武装勢力の間で衝突が激化し、数千人の住民が安全な地域に避難する事態になっている。
スンニ派大国のサウジの中で、アワミヤを含む東部カティフ州はシーア派が多数を占め、2011年の民主化運動「アラブの春」以降、散発的にサウジ治安部隊を狙った襲撃事件が続いている。
一方、サウジが軍事介入するイエメン内戦でも、7月下旬にシーア派武装組織フーシ派がサウジ西部に越境し、弾道ミサイルを発射している。サウジはシーア派の背後にイランがいるとみて警戒している。

また、過激派組織「イスラム国」(IS)が系列メディアを通じて、イランに対して新たなテロ攻撃を警告している。報じられたビデオではイスラム教シーア派を背教者と非難し、覆面姿で自動小銃を持った男三人が「イラクやシリアで行うように、テヘランでシーア派の首を切る」と脅している。

さらに、別の記事では、イエメンのアデン湾沖で、ソマリアの密航業者が当局者による摘発を恐れ、同国やエチオピアの移民や難民120人を船から海に突き落とし、非難の声が集まっていると掲載されている。飢餓や貧困に苦しむソマリアなどから、対岸のイエメンに逃れる移民は今年だけで5万5千人に上る。その多くが豊かな湾岸諸国で仕事を探すことを目的としている。

元々砂漠の住民であるベドウィンが自由に遊牧生活をしていた地域に、欧州列強帝国の都合だけで国境を策定したために、今でも内戦や紛争が続いているのである。また、さらにそうした小競り合いを利用する輩がいるために、余計問題を複雑にさせている。スンニ派とシーア派の対立は今後とも続いていくのだろうか。いずれにせよ、石油以外の産業の高度化や、環境や農業での技術的支援が求められる。特に日本は、ベルシア湾沖での軍事衝突に首を突っ込むのではなく、水資源や環境技術でリードしていくべきである。

『チベット白書』

英国議会人権擁護グループ報告、チベット問題を考える会翻訳『チベット白書:チベットにおける中国の人権侵害』(日中出版 1989)を一気に読む。

中国政府によるチベットに対する抑圧政策や見せかけの懐柔政策、大量虐殺の事実が克明に書かれている。そもそもチベットというと、中国の一部である「チベット(西蔵)自治区」のことだと思い込んでいたが、その区分は中国政府の分割政策によるものである。本当のチベットは、青海省の全域と四川省の西半分、それに甘粛省と雲南省の一部を含む平均海抜4000メートルを超えるチベット高原そのものであり、中華人民共和国の4分の1弱を占める220万平方キロメートルになる。

日本では大きく報道されていないが、漢民族による入植政策に伴う弾圧は北米におけるネイティブアメリカンや豪州におけるアボリジニと極めて類似している。また虐殺されたチベット民族は600万の人口に対して120万人とも言われている。5人に1人が中国のチベット支配の犠牲者となったのである。スターリンの大虐殺やカンボジアのポルポト政権時代の虐殺に匹敵する規模である。

また、チベット問題というと宗教や人権にばかり目が行きがちであるが、環境破壊も尋常ではないという。1959年以降20年以上もの間、毎年500万立方メートルの木材が乱伐され、生態系の破壊も著しい。日帝の大東亜共栄圏やナチスドイツの民族浄化にも近い悪辣なチベット問題にもっと注目して行きたい。