日別アーカイブ: 2017年8月16日

印パ 英領から分離独立して70年

本日の東京新聞夕刊に、2024年にも人口世界1位になると予測される大国インドと、そのインドが覇権拡大を懸念する中国との結びつきを強めてインフラ整備を進めるパキスタン両国の紛争から現在の政治経済状況までまとめて記事が掲載されている。

インドは毎年7%の成長で経済規模を拡大させているが、上位1%の富裕層が資産の58%を独占する格差社会となっている。インドの乳幼児死亡率は1000人当たり37.9人で、地方と都市の格差も深刻で、乳幼児の死者の7割が、国内で最も貧しいとされる9つの州に集中しているという。

また、パキスタンは民主政治が定着せず、武装勢力の活動もあって政情不安が続く。首都イスラマバードにある国際戦略研究センターのサルワル・ナクビ局長は「宗教を基盤にインドと分かれた当初から問題を抱えていた。国土や国家財産の多くがインドに渡り、自分たちの力で切り開かなければならなかった」とパキスタンが抱える様々な問題の根源を説明している。

インドは「世界最大の民主主義国家」と呼ばれ、政治的には安定しているものの経済的な不安定要素を抱えている。また、パキスタンはGDPでインドの約10分の1と及ばないが、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を進める中国の支援を受け、インフラ整備に力を入れている。両国とも導火線がはみ出した状態で、中国や過激派組織がいつ火をつけるとも分からない状況にある。せめてカシミール地方だけでも、中国が火種になる前に、中立国による委任統治や共同管理という形は取れないのだろうか。

印パ分離独立
20世紀前半のガンジーによる独立運動などを経て、英領インドは1947年8月、ヒンズー教徒主体のインドと、インドを挟み込む形で東部と西部にイスラム教と主体のパキスタンに、それぞれ分離独立した。東パキスタンは71年、バングラディシュとして独立した。分離独立時、パンジャブ、ベンガル地方などがインドとパキスタンに分割され、宗教対立から多数が犠牲となった。インドのジャム・カシミール州では現在も独立を目指す武装勢力が活動している。

『明日香の皇子』

内田康夫『明日香の皇子』(講談社文庫 2003)を読む。
1984年に単行本として刊行された本の文庫化である。「自作解説」の中で著者本人が、「僕がとくに好きで、ぜひお勧めしたい内田康夫作品のトップクラス、五つの中に入る」と述べているように、力のこもった作品である。高校時代に読んだ五木寛之の『風の王国』を彷彿とさせる作品で、二上山を舞台としたところや、歴史の闇に迫っていくところなどよく似ている。しかし、『明日香〜』の方も、やや粗削りながらテンポよく話が展開していき一気に読み終えた。
いつか、明日香周辺の裏道を自転車でのんびり回ってみたいものである。

米大統領ようやく「白人主義」非難

本日の東京新聞朝刊に、米南部バージニア州で白人至上主義を掲げる団体と反対派が衝突した事件で14日、ホワイトハウスで声明が読み上げられ、現場で集会を開いていた白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチを名指して非難したとの記事が掲載されていた。発生当初、トランプ氏は人種差別主義者を明確に批判しなかったことで、経済界からも抗議の声が出ていた。野党民主党も「白人至上主義の犯罪を非難するのに2日もかけるべきではない」と対応の遅さを批判している。

衝突事件そのものは、バージニア州シャーロッツビル市街地で、南北戦争(1861~65年)で奴隷制の存続を主張したとされる南軍司令官の記念像を撤去するシャーロッツビル市の計画に対する抗議などが目的で集まった右翼活動家らがデモを展開し、人種差別に反対する人らとの間で殴り合ったり物を投げ合ったというものである。州政府は「市民生活の混乱や人々への危害、公私に及ぶ財産的破壊が差し迫った」として非常事態宣言をしている。

そもそも、トランプ氏の対応よりも、奴隷制を主張した人物の記念像が今まで安置されていたことの方が驚きである。トランプ氏個人よりも、ここ数十年歴史と向き合って来なかった米国社会の罪の方が重いのではないか。AP通信は報じたところによると、シャーロッツビル市議会は四月に記念碑の撤去を決めたが、この決定について裁判所が一時差し止めを命じていたそうだ。

今、wikipedia英語版で「Robert E.Lee」や「Robert Edward Lee Sculpture」のページをザッと読んだところ、記念像の彼は大変有能で、日本で言うところの乃木希典や山本五十六、西郷隆盛のような評価が与えられている人物と想像される。そうした功罪両面ある人物の像というと撤去の可否の判断は一概には言えないかもしれない。

『〈こころ〉の定点観測』

なだいなだ編著『〈こころ〉の定点観測』(岩波新書 2001)を少しだけ読む。
精神保健に関わる医師を中心に10人の識者の評論集である。漠然たる「こころ」をテーマとして、各人が専門分野を自由に語っているだけの安易な編集で、あまり面白くない。なだいなだ氏の章だけ読んだ。

改めて、自分はこうした心理関係の文章は苦手であると思い知った。なだいなだ氏だけは社会の病理に言及するが、他の論評は個人の問題ないし周囲の人との関係性に終始する。琴線に触れるような心の内面や人間関係の問題を掘り下げるような内容にどうしても関心が向かない。社会人になって二十年、やっとそこに気付いた次第である。

「北」巡り「貿易」カード

本日の東京新聞朝刊に、トランプ米大統領が14日、他国への制裁を発動できる通商法301条に基づき、中国による米企業の知的財産侵害を調査するよう米通商代表部に指示する大統領令に署名したとの記事が載っていた。中国との貿易不均衡を見直す公約実現に加え、北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止に向けた中国の対応を促す狙いがあるとのこと。

これに対し、中国商務省の報道官は15日、「米通商法301条は一方的措置の色彩が濃く、他国は一貫して反対している」「米国は多国間ルールの破壊者となるべきではない」と、自由貿易推進のために世界貿易機関(WTO)が定めた規則を守れとの談話を発表している。

この通商法301条は他国との調整を無視し、軍事的圧力を背景に米国が一方的に推し進める施作である。実際に制裁が発動された場合、当該国の周辺を米軍がウロつくのである。もしくは当該国と敵対関係にある近隣諸国との合同軍事演習が展開される可能性が高い。日本が横柄な米国彼氏に対して、「都合の良い女」を演じてきた歴史を見るべきである。中国と対立関係の懸念がある日本や台湾、チベット、中央アジアと米国との関係に注目していきたい。

米通商法301条
1974年に制定された米通商法の他国による「不公正な貿易慣行」への報復措置を定めた条項。米通商代表部(USTR)が調査し、不当な輸出補助金やダンピング(不当廉売)などに当たると判断した場合、相手国との是正措置を協議する。解決しなければ一方的に高関税や輸入制限などの措置を講じることができる。
80年代の日米貿易摩擦で日本から譲歩を引き出すために多用された。(時事)