日別アーカイブ: 2017年8月9日

東京新聞国際面から

マニラで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の会合が終わった。北朝鮮の核・ミサイル問題を巡り、北朝鮮包囲網を構築したい米国と、現状維持を望み、圧力強化に慎重な中国が激しい駆け引きを繰り広げ、ASEAN諸国は双方の顔を立てようと腐心したとの記事が出ていた。

関係図も掲載されているが、複雑怪奇な国際政治が舞台裏が垣間見える。ASEANはベトナム戦争中の1967年、仏教、イスラム教、キリスト教など主要な宗教が異なり、民族も政治もさまざまな国であるが、米国の支援のもと、反共主義に賛同するという共通点で設立された経緯がある。その後、ヴェトナムやミャンマー、ラオスなども加わり、現在では10カ国体制となっている。しかし、大国の思惑が激突する地政学的側面は避けられない。北朝鮮のミサイル発射にほとんどの国が批判を表明したものの、その実効性には疑問符が付きまとう。

その中で、北朝鮮に近い(支援している?)中国は、貿易や投資でフィリピンとの連携を深め、さらにカンボジアやラオスをも籠絡する作戦に出ている。一方米国は、南シナ海で中国と領有権を争うベトナムとの関係強化に乗り出し、主体性のない忠犬的役割を担う日本を利用して、インドネシアやタイ、マレーシアとの絆を深めつつある。タイ・タマサート大のロビン・ラムチャラン教授が「ASEANは冷戦期も大国による覇権争いの中で、うまくかじ取りをした。これまで習得した知恵を生かす必要がある」と述べるように、域外の大国同士の衝突に巻き込まれず、宗教や民族を超えた地域の安定という原則を大切にしてほしい。

『“全身漫画”家』

江川達也『“全身漫画”家』(光文社新書 2002)を読む。
『東京大学物語』や『まじかる☆タルるートくん』などの漫画で知られる江川達也氏が、自身の作品に込めたテーマや展開の妙について赤裸々に語る。執筆・構成は他者の手によるものだが、常に読者の予想を裏切り、少年誌でありながら人間の最も根源的な営みであるセックスに向き合おうとする真摯な姿勢が伝わってきた。