英国議会人権擁護グループ報告、チベット問題を考える会翻訳『チベット白書:チベットにおける中国の人権侵害』(日中出版 1989)を一気に読む。
中国政府によるチベットに対する抑圧政策や見せかけの懐柔政策、大量虐殺の事実が克明に書かれている。そもそもチベットというと、中国の一部である「チベット(西蔵)自治区」のことだと思い込んでいたが、その区分は中国政府の分割政策によるものである。本当のチベットは、青海省の全域と四川省の西半分、それに甘粛省と雲南省の一部を含む平均海抜4000メートルを超えるチベット高原そのものであり、中華人民共和国の4分の1弱を占める220万平方キロメートルになる。
日本では大きく報道されていないが、漢民族による入植政策に伴う弾圧は北米におけるネイティブアメリカンや豪州におけるアボリジニと極めて類似している。また虐殺されたチベット民族は600万の人口に対して120万人とも言われている。5人に1人が中国のチベット支配の犠牲者となったのである。スターリンの大虐殺やカンボジアのポルポト政権時代の虐殺に匹敵する規模である。
また、チベット問題というと宗教や人権にばかり目が行きがちであるが、環境破壊も尋常ではないという。1959年以降20年以上もの間、毎年500万立方メートルの木材が乱伐され、生態系の破壊も著しい。日帝の大東亜共栄圏やナチスドイツの民族浄化にも近い悪辣なチベット問題にもっと注目して行きたい。