日別アーカイブ: 2017年8月12日

本日の東京新聞国際面

本日の国際面は東アジア尽くしであった。

まず、先月亡くなった中国のノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏を支援した人権活動家だが、現在も軟禁状態が続いているという。劉氏の死は中国国内ではほとんど報道されず、庶民には知られていない。「劉暁波」や妻の「劉霞」で検索しても結果は表示されないように規制が加えられている。

劉暁波
中国の作家で民主活動家。米コロンビア大学客員研究員だった1989年、民主化を求める学生らの運動を弾圧した「天安門事件」で、学生を支援。2008年、言論の自由を訴える「08憲章」を発表し拘束され、国家政権転覆煽動罪で11年に判決を受け服役した。10年に獄中でノーベル平和賞を受賞。末期の肝臓ガンで国外での治療を希望したが、遼寧省瀋陽市の病院で死亡、遺骨は海葬された。

また、香港民主派政党の民主党員が、九竜地区の繁華街で標準中国語を話す男らに連れ去られ、劉霞さんとの面識の有無などについて詰問され、監禁暴行を受ける事件も発生している。

また、別記事であるが、中国の国家インターネット情報弁公室は11日、国家の安全に危害を与える情報が含まれているとして、「ネット安全法」に基づいて大手ネット3社の一斉調査に乗り出したとのこと。中国版LINE(ライン)に当たる「微信」、中国版ツイッター「微博」、検索エンジン「百度」の掲示板で、いずれも中国で広く利用されているネットサービスである。同弁公室は「暴力テロや虚偽情報、わいせつな情報を拡大させており、管理義務が不十分だ」と調査の理由を説明しているが、今秋の共産党大会を控え、習近平指導部による言論統制の一環とみられている。

他にも、北朝鮮の官製集会の記事が大きく掲載されていた。中国国内では表現の自由が認められていない。それは報道の自由や表現・通信の自由が認められると、共産党支配層への批判が集中し、「天安門事件」のような叛乱が起きることを危惧するに他ならない。一方で、そうした中国を揶揄できるほど、日本は民主化が熟成しているのであろうか。目糞鼻糞を笑う状況になってはいないか。

『最後は孤立して自壊する中国』

石平・村上政俊対談集『最後は孤立して自壊する中国:2017年習近平の中国』(WAC 2016)を読む。
保守系の論壇誌「月刊WiLL」を刊行している出版社の本なので、自民党の安倍総理の大局観を持ち上げる一方、民主党政権の政治的判断やオバマ政権、中国共産党を蔑視するというスタンスで話が展開していく。
しかし、カースト制度に近い身分制社会が蔓延っていたり、全人口の4%ほどの支配階級を守ることを第一義に政治や経済が動いていたりする現実を知ってショックを受けた。

中国では戸籍制度がまだ厳格に残っており、農村に戸籍がありながら農村に職がなく都市部に出てきた人たちは「農民工」と呼ばれ、都市住民に比べ税制や雇用の面で明らかな差別を受けている。現在は建設の現場や輸出産業の工場で吸収されているが、いずれ経済成長が鈍化すると、職も住む場所も帰る場所も失ってしまう。しかもそうした「農民工」が2億6千万人もいるという。中国の歴史は常に、そうした行き場を失った民衆の叛乱による革命の繰り返しだが、著者の二人も中国が内戦状態に陥り、数百万人単位の難民が近隣諸国に流れていくことを懸念している。

また、これまたあまり報道されないが、中国では地方政府の庁舎を襲撃する事件が年間数万件、毎日何百件も発生しているという。そうした下層階級の暴動の鎮圧やチベット人やウイグル人などの少数民族を抑えつける目的で、武装警察が組織されている。「武警」とも呼ばれているが、普通の警察とは全く異質で、外敵と戦う人民解放軍と同じ位置付けで、内なる敵と戦うためだけに組織され、国内の「秩序」を保つために活動している。

著者たちは、そうした中国の内戦や自壊に対し、米国を中心とした包囲網を敷くことを説くのだが、そうした安易な対米追従の考えを一蹴できないほど、インパクトのある事例が紹介されていた。

『〈心配性〉の心理学』

根本橘夫『〈心配性〉の心理学』(講談社現代新書 1996)をパラパラと読む。
新書にしては少々学術的で、心配性の現代的定義に始まり、その症例や原因、分析や克服法まで、丁寧にまとめられている。筆者は不満や劣等感に悩まされることなく、優越心を満たし幸福になるために、次のような能力を身につけることを薦めている。

  1. 他の人の目ではなく、自分自身の目で自分を見て、自分の人生を生きること。自分なりの価値あるものを見つけて、それに打ち込むこと。
  2. 他の人と気軽にうちとけることができ、一緒にいることを楽しめること。
  3. 自然や生活の中に、自分なりの喜びや感動を見いだせること。大部分の人が見過ごしてしまうようなことから、たとえちょっとした喜びや感動でもよい、そんなものを感じとれれば、どんなに豊かな人生になることでしょう。
  4. 他の人に喜びを与えられること。人気があったり、かわいがられる人は、他の人に何らかの喜びや楽しみを与えているから好かれるのです。