日別アーカイブ: 2017年8月17日

『シーラカンス殺人事件』

内田康夫『シーラカンス殺人事件』(徳間文庫 1995)を読む。
1983年に刊行された本の文庫化である。警視庁の名探偵刑事岡部警部の緻密な捜査によって、ほとんど容疑者が決まりかけていた事件が、ドミノが倒れるように一気にどんでん返しで解決される。内田氏の初期の作品にあたり、最後の最後で謎が全て明かされ合点が行く仕掛けの浅見光彦シリーズに繋がる展開となっている。

僕はどちらかといえばサスペンスタッチのものよりも、パズルを解くようなものが好きですし、意外性や不思議を大切にしたい性格なのです。推理小説の楽しさは、ゲーム感覚で読める-という点にあるといっていいかもしれません。

小説の舞台となったシーラカンスの生息地のコモロ・イスラム共和国という国が本当にあるとは知らなかった。現在ではコモロ連合と名を変え、モザンビークとマダガスカルの間の海峡にある小さな3つの島からなる国である。人口は約80万人であり、3つの島から大統領が輪番制で選出され政治的安定が保たれている。

「地上型イージス導入へ」

本日の東京新聞夕刊に、防衛省が海上自衛隊のイージス艦搭載の迎撃ミサイルを地上配備する「イージス・アショア」の導入を決め、2018年度予算の概算要求に設計費を盛り込むとの記事が載っていた。当初は導入に向けた調査費を計上する方針だったが、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射に対処するために前倒しした。

記事だけを読むと、調査をすっ飛ばして導入が決定されたと読み取れるが、あまりにご都合主義ではなかろうか。そもそも日本近海に配備されている迎撃ミサイルの対応能力すら試されないままに、防衛能力の向上が不可欠との判断で、地上にも導入するというのは如何なものだろうか。省内でも「北朝鮮の脅威」に誰も反対できない雰囲気のまま押し通されたのだろうか。それともトランプの圧力?

また、今回の概算要求には、自衛隊初の宇宙部隊の創設が盛り込まれている。日米が全世界を監視する体制構築を目指すために、日米が使用する人工衛星を対衛星兵器などから守る部隊を作るというのだ。しかし、成層圏の遥か先に浮かぶ衛星を守ることが「自衛」隊の管轄領域なのだろうか。2015年に策定された「日米防衛協力のための指針」には、「自衛隊及び米軍は、日本の上空及び周辺空域を防衛するため、共同作戦を実施する」との定めはあるが、宇宙は想定の範囲外である。また、「日米両政府は、適切な場合に、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互に支援する」ともあるが、衛星の防衛がこれに該当するのであろうか。宇宙に浮かぶものは全て通信能力を備えており、さらに国境もないため、宇宙そのものを米国が支配し、日本がそれにスネ夫のように追従する形になるのか。
テレビで「核の脅威」が盛んに煽られるが、その一方でひっそりと行われる政治に注意を払いたい。

「イラン巨大油田開発入札」「イラク国境 サウジ開放へ」

本日の東京新聞朝刊に、2010年に日本が米国の制裁強化を受けて撤退した中東最大級のイラン南西部アザデガン油田の開発で、当時権益を持っていた開発帝石が海外石油大手主導のコンソーシアム(企業連合)に加わる形で国際競争入札への参加の検討を始めたとの記事が掲載されていた。

トランプ政権が同盟国イスラエルとともにイラン敵視の姿勢を崩さず、弾道ミサイル開発に関連して独自の制裁強化を繰り返す中で、国際帝石は企業連合を組んで米国以外との国とのパイプを強化したいという狙いがある。

アザデガン油田は260億バレルの埋蔵量と推定されており、日本としては失いたくない原油ルートである。油田は地層が褶曲した新期造山帯に溜まりやすい。イラン国内の油田は、アルプス-ヒマラヤ造山帯と重なるペルシア湾からイラクとの国境沿いの南西部にほぼ集中している。そのため、パイプラインを引く必要がなく(コストをかけずに)、すぐにタンカーで輸出できるメリットがある。他国を経由してパイプラインで輸送する中央アジアやシベリア地域などに比べてリスクも軽減できる。

 

また、別の記事では、サウジアラビアが1990年のイラクによるクウェート侵攻以来、閉鎖していたイラクとの国境の開放を計画していると報じている。イスラム教スンニ派のサウジは、2003年のイラク戦争の後で誕生したイラクシーア派政権との関係が冷え込んだが、14年に宗派間のバランスに配慮するアバディ政権が誕生すると、徐々に改善。翌年には大使館業務も再開している。

この背景には、シーア派が6割を占めるイラク国内で、親イランのマリキ前首相が率いる最大会派と対立関係にある、イランと距離を置く国内3番手のシーア派のサドル師派と、イラクで影響力を確保したいサウジの戦略が一致したという政治的思惑がある。

宗教や原油、国境すらも手玉に取ってしまう国際政治の怖さが垣間見える。