本日の東京新聞朝刊の社説に、国家破綻が危惧される南米ベネズエラのマドゥロ大統領の責任を問う内容が掲載されていた。
日本の約2.4倍の国土に約3000万人の国民が暮らすベネズエラ(首都カラカス)であるが、世界屈指の石油資源に恵まれ、1950年代には南米有数の富裕国となった。それが今では主食のとうもろこし粉や食用油などの食料品、洗剤、トイレットペーパーなどの日用品が店頭から消え、年間3桁の猛烈なインフレが国民生活を直撃している。
1999年に就任したチャベス前大統領は反米左派を掲げて社会主義化を進めた。企業を国有化し、食料品などの基礎生活財の価格を低く抑える統制に踏み切った。支持基盤の貧困層にはバラマキ政策を展開した。しかし、価格統制と国有化は生産や販売の意欲を削ぎ、生産縮小、商品の売り惜しみに繋がり、旧ソ連の失敗の繰り返しとなっている。それでもチャベス時代は原油高騰の恩恵を受けて、その収入で得た輸入品で補うことができた。だが、チャベスの後継指名を受けたマドゥロ氏は油価下落のアオリを食らいその手を封じられている。さらに、マドゥロ氏は国内外の反対を押し切って、国会の権限を取り上げ、司法権に加え立法権まで手に入れ独裁体制を確立している。反政府運動は一層先鋭化し、反政府デモと治安部隊の衝突で死傷者も続出している。
Newsweek日本版のネット記事によると、チャベス大統領時代に中国からのひも付きマネーが大量に流入し、7年間で630億ドルに達しているという。その返済は全て石油で行うという裏取引があったようで、今やベネズエラは契約当初の2倍の原油を中国に輸送する羽目になっている。米国がほとんど関わりを絶っている以上、中国の出方に注目が集まる。
Newsweek日本版の記事の執筆者であるクリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)は次のように述べる。悠久のシルクロードのイメージでデコレーティングされてる「一帯一路」の欺瞞にはこれからも注目していきたい。
中国当局は一帯一路を語る際、第二次大戦後の欧州復興計画マーシャルプランをよく引き合いに出す。しかし一帯一路は「中国による中国のための計画」だ。低金利や無利子の開発援助と違い、金利は市場の相場に基づき高く設定される。しかも鉄道や港湾の建設事業を受注するのは中国企業で、資材も中国から輸入し、労働者も中国人だ。
そうであっても中国は高い代償を免れ得ない。既に中国当局は南アジアと中央アジアの国々への融資で多額の焦げ付きが出ると予想している。
スリランカがいい例だ。中国は20億ドルの借金棒引きを認めたが、その後にまたインフラ事業で320億ドルを投資した。大型インフラ事業で中国マネーが流入するパキスタンではインフレが起きるのは必至で、そうなれば債務返済はさらに困難になる。