出口保夫『ロンドン橋物語:聖なる橋の二千年』(東京書籍 1992)を読む。
1984年に刊行された『ロンドンブリッジ:聖なる橋の二〇〇〇年』(朝日イブニングニュース社)に加筆・修正したものである。テムズ河に架かりロンドンのシティとサザック地区を結ぶロンドン橋の歴史がまとめられている。年表も付されており、歴史の勉強にも良い。
♪ロンドン橋落ちた♪ の曲で有名なロンドン橋は、ローマ時代から存在し、サクソン人やノルマン人の手によって何度も架け替えられてきた。1209年に長さ300メートル、幅7メートルの石造のロンドン橋が完成している。当時の公共事業は修道院が担っていたこともあり、橋の中心には聖トマス・ア・ベケットの礼拝堂が建設されている。後年になると、数多くの店が橋上に居を構えるようになり、4階建ての建物が橋幅いっぱいに密集し、数百人が生活するようになっていった。現在でいうアーケード商店街のような雰囲気で、観光名所とも、また公開処刑の場ともなった。
清教徒革命の頃には、ピューリタンによって数多くのカトリック建造物が破壊され、聖トマス礼拝堂も粉々となった。ペストの流行や大火にも何とか耐え、600年以上もロンドンの中心を飾ることとなった。しかし、19世紀に入ると馬車の時代となるとあまりに通行に不便を来すようになり、1831年に幅17メートルの新しい橋にその地位を譲ることになる。しかし、モータリゼーションの到来で、1973年には中央6車線に両側5メートルの歩道を持った現在の橋に取って代わることになる。
橋の建設という規模の大きい事業は、国王の力も問われることになる。ロンドン橋を巡ってワット・タイラーらの農民一揆や、首長令、大憲章、クロムウェルの革命などにも触れられており、世界史の授業で使ってみたい素材であった。