東京新聞国際面から

マニラで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の会合が終わった。北朝鮮の核・ミサイル問題を巡り、北朝鮮包囲網を構築したい米国と、現状維持を望み、圧力強化に慎重な中国が激しい駆け引きを繰り広げ、ASEAN諸国は双方の顔を立てようと腐心したとの記事が出ていた。

関係図も掲載されているが、複雑怪奇な国際政治が舞台裏が垣間見える。ASEANはベトナム戦争中の1967年、仏教、イスラム教、キリスト教など主要な宗教が異なり、民族も政治もさまざまな国であるが、米国の支援のもと、反共主義に賛同するという共通点で設立された経緯がある。その後、ヴェトナムやミャンマー、ラオスなども加わり、現在では10カ国体制となっている。しかし、大国の思惑が激突する地政学的側面は避けられない。北朝鮮のミサイル発射にほとんどの国が批判を表明したものの、その実効性には疑問符が付きまとう。

その中で、北朝鮮に近い(支援している?)中国は、貿易や投資でフィリピンとの連携を深め、さらにカンボジアやラオスをも籠絡する作戦に出ている。一方米国は、南シナ海で中国と領有権を争うベトナムとの関係強化に乗り出し、主体性のない忠犬的役割を担う日本を利用して、インドネシアやタイ、マレーシアとの絆を深めつつある。タイ・タマサート大のロビン・ラムチャラン教授が「ASEANは冷戦期も大国による覇権争いの中で、うまくかじ取りをした。これまで習得した知恵を生かす必要がある」と述べるように、域外の大国同士の衝突に巻き込まれず、宗教や民族を超えた地域の安定という原則を大切にしてほしい。

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