山井教雄『まんが 現代史:アメリカが戦争をやめない理由』(講談社現代新書 2009)を読む。
先日、ソマリアで国連平和維持軍として出動した米軍兵士18人が殺害された「モガディシュの戦闘」を描いた映画を観たので、その背景を確認したいと思い手に取ってみた。また、米軍の支援を受けたイスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザに進行し、地上攻撃を行ったというニュースもあり、「アメリカが戦争をやめない理由」とのサブタイトルにも興味を感じ、一気に読み終えた。
「まんが」とあるが、一昔前の現代書館の「フォー・ビギナーズ・シリーズ」にそっくりで、ヒトコママンガとセリフが中心の内容で、テーマの全体像をイメージしやすいような内容となっている。第2次大戦終結直前のヤルタ会談から冷戦終了を告げるマルタ会談、また、主にアフガニスタン、パキスタン、イラン、イラクを中心に、冷戦における好い加減な介入が以降の宗教・民族問題を生み、アフガン戦争・イラク戦争に至る背景まで分かりやすく解説されている。
はあ〜。。。缶チューハイの酔いが回ってきた。あとがきの中で筆者の言葉を紹介して、論を閉じたい。
戦争は、人類がこの世界に登場して以来の、持って生まれた病気です。治療の第一歩は、戦争の馬鹿馬鹿しさを、徹底的に知ることだと思います。(中略)
戦争をする国は、国民にその戦争の馬鹿馬鹿しさを極力知らせないように、あらゆる手を尽くします。多くの数字が「国家機密」、または「軍事機密」として秘密にされます。政府が発表する数字にしても、戦果は大きく、自分たちの被害や戦費は小さく発表します。(中略)
数百の民間の警備会社が、米政府に委託されて、2万〜5万人と推定される、やくざ集団のような傭兵をイラクに送っています。正規軍と違って、軍規に縛られない彼らの傍若無人なふるまいが、イラク人の反米感情を増大させています。
しかし、彼らの犯罪は、イラクの法律では裁かれません。彼らが戦死しても、米軍の戦死者数には加算されません。また、年間1000億ドルと言われる、傭兵にかかる費用も戦費として計算されないのです。
この本では、今までにアメリカが、イラク、アフガニスタンに費やした戦費を1兆ドル(100兆円)とする説を採りましたが、どこまでを戦費として考えるかで色々な説があり、最低3兆ドル(300兆円)かかっていると計算する経済学者もいます。
正確な戦死者数も、戦費の総額も分からない大きな闇の中に、この巨額な金—税金は、だれかの懐に消えていくのです。