丸木位里・丸木俊共同制作『原爆の図』(丸木美術館 1983)を見る。
原爆のキノコ雲の下で苦しむ人びとを描いた地獄絵図である。昔からその名前は知ってはいたが、実際に手に取って第1部から第15部まで全ての屏風絵を見るのは初めての経験であった。先日東京新聞で、原爆の図丸木美術館を学校の校外学習に出かけようと申請を出したところ注文がついたという記事を目にして、気にかかっていたので手に取ってみた。
丸木夫妻は広島・長崎の原爆の惨状に続いて、ビキニ環礁の水爆実験で被災した第五福竜丸、反戦・反原発の署名活動、灯籠流し、南京大虐殺、アウシュビッツ大量虐殺、沖縄戦、水俣病、三里塚闘争まで、一貫して「権力というバケモノにみんながいじめられている」姿を描いている。過去の歴史を過去のままに大切に「保管」しておくのではなく、現在に続いていく問題として提起している。また、ある一面からの被害の訴えに留まるのでなく、米国での原爆地獄絵図と日本国内での南京大虐殺の絵画の展示を、同じ「文脈」で位置づけている。
「現在進行形」として原爆を描いたこの『原爆の図』が刊行されて既に30年が経過している。高校生の教育に携わる身としては、当時の丸木夫妻が同時代の世代に訴えたかった思いを、30年後の現在にピチピチとした形で蘇らせるだけの「読解力や思考力、共感力」を豊かに育んでいきたい。
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