日別アーカイブ: 2014年7月24日

『ワンチュク国王から教わったこと』

ペマ・ギャルポ『ワンチュク国王から教わったこと』(PHP研究所 2012)を読む。
著者は、ブータン王国政府・首相顧問であり、現在は桐蔭横浜大学で教鞭をとる政治学博士である。2011年11月ブータン国王ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下夫妻が国賓として来日した際には通訳を務めており、福島の被災地や慶応大学、国会、京都などの訪問に際しての陛下の表情や言葉、ブータン国の紹介がまとめられている。

3年前にテレビで観たときは、「国民総幸福度」を提唱したブータン王国の若きリーダーということで、物珍しい興味を感じていた。しかし、本を読むうちに、皇室関係者がきっちりとお膳立てをした、古き良き日本人の姿を彷彿させる物語のモデルとして利用されているのではという思いを感じるようになった。それなりの人が書いているので仕方ないが、あまりに日本人の哲学や日本の近代化・現代化の歴史を手放しにべた褒めするような祝辞に少し辟易してしまった。
中国と国境紛争を抱える国にあえて親しみや郷愁のイメージを与えようとすることで、海外派兵を容易にする地均しの一環なのかと勘ぐってしまう。

『北極の光』

てんきりょう『北極の光:北欧旅日記』(近代文芸社 1997)を読む。
近代文芸社刊行の本なので、おそらくは自費出版であろうか、個人の旅行ブログのような内容である。
アイスランドへの8日間の旅行体験記がまとめられている。といっても、肩肘の張った自転車やバイクでの過酷な冒険旅行ではなく、バスツアーや市内観光、旅先で出会った人とのおしゃべり、食事のメニューが時間軸に沿って綴られているだけである。
アイスランドの地図や統計情報を片手にしながら、20分くらいで読み終わってしまった。感想はない。しかし、内容はさておき、「白夜」や「溶岩台地」「大西洋中央海嶺」、広がるプレートの裂け目が地表に顔を出す「ギャオ」などの地理用語が出てきて、地図帳や資料集の復習に役立った。

『国境を越えるタブーの世界地図』

世界情勢研究会編『国境を越えるタブーの世界地図』(永岡書店 2005)を読む。
世界地誌の勉強の一つとして手に取ってみた。
コンビニや駅のキオスクに置いてありそうな内容で、世界各地で活動する(した)「テロ」集団や紛争、犯罪組織について、様々な類書を分かりやすく再構成した文庫本である。まずテロリズムを「イスラム過激派」「民族主義に起因するテロリズム」「政治思想に起因するテロリズム」と、宗教、民族、イデオロギーの3つに丁寧に分類し、、次に、そうしたテロや内戦が行われる地域性について、「パレスチナ問題と中東和平」、「バルカン半島」、「アフガニスタン」、「インドVSパキスタン」、「インドネシア」、「アフリカ諸国」の6つの場所を挙げてさらに解説が加えられる。

文庫サイズの本だったので気軽に読んでいたが、スーダンやリビア、パキスタンのイスラム過激派の内実や、インドネシアにおける独立問題、日本赤軍やドイツ赤軍といった、ニュースではよく耳にするのだが、あまり馴染みのない国や地域の問題が網羅されており、知識の整理に役立った。
後半に、そうしたテロ活動を支える「テロ支援国家」として、イランやイラク、シリア、キューバ、北朝鮮などの国に並んで、ロシア、アメリカ、イスラエル、インドといった国もきちんと明示されていた。安手の文庫本にはもったいないくらいの内容であった。