ペマ・ギャルポ『ワンチュク国王から教わったこと』(PHP研究所 2012)を読む。
著者は、ブータン王国政府・首相顧問であり、現在は桐蔭横浜大学で教鞭をとる政治学博士である。2011年11月ブータン国王ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下夫妻が国賓として来日した際には通訳を務めており、福島の被災地や慶応大学、国会、京都などの訪問に際しての陛下の表情や言葉、ブータン国の紹介がまとめられている。
3年前にテレビで観たときは、「国民総幸福度」を提唱したブータン王国の若きリーダーということで、物珍しい興味を感じていた。しかし、本を読むうちに、皇室関係者がきっちりとお膳立てをした、古き良き日本人の姿を彷彿させる物語のモデルとして利用されているのではという思いを感じるようになった。それなりの人が書いているので仕方ないが、あまりに日本人の哲学や日本の近代化・現代化の歴史を手放しにべた褒めするような祝辞に少し辟易してしまった。
中国と国境紛争を抱える国にあえて親しみや郷愁のイメージを与えようとすることで、海外派兵を容易にする地均しの一環なのかと勘ぐってしまう。