佐藤秀明写真集『新日本の路地裏』(ピエ・ブックス 2008)を眺める。
先日読んだ観光地だらけの『世界の路地裏』と違い、古ぼけた長屋やスナック、行商のおばちゃんが写っているひと昔、ふた昔前の何気ない日常風景である。20数年前であれば誰一人買わない写真集である。
今、日本から路地裏が消えようとしている。古い家がどんどん取り壊され、特徴のない、積み木でこしらえたような町がやたらと多くなってしまったのだ。(中略)今に日本では、十年もたてば変わってあたりまえなのかもしれないが、なにか寂しい。生きることに懸命だった貧しかったころの、温かな生活感が路地と共に消えてゆくのである。
著者が述べるように、込み入った路地裏を探すというのは、周囲や社会の冷たい流れに流されまいとする自分を発見することに繋がっていくのだ。