熱帯低気圧(Cyclone)
熱帯低気圧は熱帯収束帯の中で,海水温が27℃以上の海域で発生し,最大風速が17.2m/s(34knot/h)以上に成長したものである。中部Americaや西太平洋,Carib海で発生するものをHurricane,India洋やAustralia近海で発生するものをCyclone,西太平洋や南China海,Philippine海で発生するものを台風と呼んでいる。
熱帯低気圧は,赤道付近の暖かい海面から気化した水蒸気を多く含んだ空気が,上昇気流によって上空で雲や雨といった雲粒に変化する時に生まれる潜熱によって発生する。その潜熱によって周囲に空気が暖められ,さらに上昇気流の発生を促し,次から次へと積乱雲が作られる。これにCooriolisの力が加わって,積乱雲の集合体が渦を巻き始める。熱帯低気圧は1日に200億ton前後の水蒸気が雨になるのだが,この際に発生する潜熱が空気を動かす風のenergyとなり,南半球では時計回りに中心に向って吹き込むことになる。
台風の被害は強風と豪雨と高潮の3つの種類がある。高潮は強い低気圧の影響で海水面が異常に高くなる事象で,1959年9月に和歌山県潮岬付近に上陸した伊勢湾台風では,主に高潮によって5000人以上の命が奪われた。
たつまき(Tornado)
たつまきは風速が116km/hを越える渦を巻いた激しい風のことである。日本では年平均20個程度だが,Americaでは年平均800個も発生し,200人の死者が出ている。その発生過程であるが,Supercellと呼ばれる巨大な積乱雲(入道雲)の周りでゆっくりと回転していた空気が,強い上昇気流に巻き込まれ,回転半径が急に小さくなって,積乱雲の底の一部から細く渦を巻いた雲が垂れ下がり,それが地上に届くと竜巻となり,周辺のものを巻き上げながら時速100km越の高速で移動していく。ちょうど掃除機の吸い込みHoosのようなものである。回転速度は時に360m/hにも達し,触れるもの全てを空中に吸い上げてしまう。やがて,竜巻の回転力が弱まると,渦巻きは積乱雲に吸い込まれるように消えていく。
2013年9月2日に埼玉県越谷市で発生した竜巻は,長さ約19km,幅100~200mで,竜巻の強さを示す藤田scaleがF2(風速50~69m/s:住家の屋根がはぎとられ,弱い非住家は倒壊する)と判定され,重症7名,軽症56名の計63名の被害者を出す惨事となった。現段階では竜巻の発生原因が明確でないため,気象庁の竜巻注意報の的中率も1/10程度に留まっている。
Plate Tectonics
地球の表層を硬さに違いによって分類すると,厚さ70 kmぐらいの硬いLithosphereと,その下の厚さ600kmぐらいの変形しやすいAsthenosphereに分けられる。Asthenosphereは温度が1000℃を越えてmantleの物質が溶けて柔らかくなったものである。この柔らかいAsthenosphereの上を温度が低くて硬いLithosphereが移動する仕組みをPlate Tectonicsと呼ぶ。大陸移動説や海洋底拡大説をさらに体系化した理論で,1960年代後半から急速に発展した。
運動している隣のPlateの間には大きく分けて,広がる境界(大西洋中央海嶺・Africa大地溝帯等),狭まる境界(日本海溝・日本列島・Himalaya山脈,Alps山脈等),ずれる境界(San Andreas断層等)の3種類がある。広がる境界ではその隙間を埋めるようにmantle物質が上昇してきて絶えず新鮮なPlateを生産している。Icelandの火山活動はこの海嶺の上で行われている。また,環太平洋にある火山Plateは狭まる境界にあり,日本の火山も太平洋Plate,Philippine 海Plate,Eurasia Plate,北米Plateが衝突する境界にある。2013年11月に小笠原諸島の海底火山の噴火により突如出現した西之島新島も太平洋Plateとhilippine 海Plateの境界上に位置し,2014年6月現在,隣の西之島と合体し,その面積は80万㎡に達している。
圏谷(kar)
寒冷な高山地域では,冬に積もった雪が夏でも溶けきれずに,長年の積雪が重なり圧縮されて氷河が作られる。Alps山脈やHimalaya山脈,日本の北Alpsや北海道の日高山脈頂上付近などでは,谷底と谷壁を削りながらゆっくりと流れ下る谷氷河が発生する。その結果,圏谷やU字谷などの侵食地形が形成される。また,逆に周囲を氷河で削り取られて鋭く尖ったHorn(尖峰)が作られることもある。
圏谷とは,山頂付近や山腹に氷河の侵食によってつくられた半円(馬蹄)形の窪地を指す。間氷期や後氷期になり氷河消失すると,圏谷の全面にMoraine(氷河の末端部に堆積した砂や礫,岩塊の砕屑物)が残され,底部は氷河湖となることもある。
【参考文献】
饒村曜『こんなにためになる気象の話』ナツメ社 2003
下鶴大輔『火山のはなし』朝倉書店 2000
『新編地理資料2013 』東京法令出版 2012