日別アーカイブ: 2014年7月27日

『生きるコント』

大宮エリー『生きるコント』(文藝春秋 2008)を読む。
2006年から2007年にかけて「週刊文春」に連載されたコラムがまとめられている。
著者の大宮エリーさんは、東大薬学部卒業後、電通に入社し、フリーになってから映画監督・脚本家・放送作家を務めるという異色の経歴の持ち主である。テレビでトーク番組で見かけて、良い意味で男っぽい視点と物言いが印象的であったので手に取ってみた。
日常生活でふと感じる人生訓めいたエピソードを紹介する『生きるヒント』を捩ったタイトルから想像されるように、日々の生活の中での余計な気遣いや勘違いから生じる笑いが紹介されている。全て彼女自身の体験談であり、芸人も真っ青の「おいしい」エピソードばかりで、一気に読んでしまった。

『キューバ紀行』

ウィルソン・夏子『キューバ紀行:南の島の「社会主義観光国」を歩く』(彩流社 2006)を読む。
著者は、刊行当時、カナダ在住30年を数え、室内楽ピアノ奏者と日本語講師を経て、中米の国に関心を持つフリーライターである。1995年から2005年の10年間にわたって続けられたキューバ観光の様子がまとめられている。前半は海で溺れた経験や、何が言いたいのか分からないヘミングウェイへの思いなど、どうでもいいエピソードが続く。しかし、後半は、戦前キューバに移住し、過酷なサトウキビ農場で働き収容所に入れられた日本人や、キューバ革命に参戦した日系人など、あまり耳にしたことがない話があり興味深かった。
総じて、経済封鎖が続く社会主義国で生きるキューバ国民の逞しくも明るい人柄はよく伝わってきた。ゲバラのTシャツを売り物にし、奴隷監視塔を観光資源にするそのバイタリティには、チェ・ゲバラとフィデル・カストロの二人の偉人に先導されバティスタ政権を追い出し自分たちの国を作ったという自負が感じられた。