本日の東京新聞朝刊に、2010年に日本が米国の制裁強化を受けて撤退した中東最大級のイラン南西部アザデガン油田の開発で、当時権益を持っていた開発帝石が海外石油大手主導のコンソーシアム(企業連合)に加わる形で国際競争入札への参加の検討を始めたとの記事が掲載されていた。
トランプ政権が同盟国イスラエルとともにイラン敵視の姿勢を崩さず、弾道ミサイル開発に関連して独自の制裁強化を繰り返す中で、国際帝石は企業連合を組んで米国以外との国とのパイプを強化したいという狙いがある。
アザデガン油田は260億バレルの埋蔵量と推定されており、日本としては失いたくない原油ルートである。油田は地層が褶曲した新期造山帯に溜まりやすい。イラン国内の油田は、アルプス-ヒマラヤ造山帯と重なるペルシア湾からイラクとの国境沿いの南西部にほぼ集中している。そのため、パイプラインを引く必要がなく(コストをかけずに)、すぐにタンカーで輸出できるメリットがある。他国を経由してパイプラインで輸送する中央アジアやシベリア地域などに比べてリスクも軽減できる。
また、別の記事では、サウジアラビアが1990年のイラクによるクウェート侵攻以来、閉鎖していたイラクとの国境の開放を計画していると報じている。イスラム教スンニ派のサウジは、2003年のイラク戦争の後で誕生したイラクシーア派政権との関係が冷え込んだが、14年に宗派間のバランスに配慮するアバディ政権が誕生すると、徐々に改善。翌年には大使館業務も再開している。
この背景には、シーア派が6割を占めるイラク国内で、親イランのマリキ前首相が率いる最大会派と対立関係にある、イランと距離を置く国内3番手のシーア派のサドル師派と、イラクで影響力を確保したいサウジの戦略が一致したという政治的思惑がある。
宗教や原油、国境すらも手玉に取ってしまう国際政治の怖さが垣間見える。