『新しい地球観』

上田誠也『新しい地球観』(岩波新書,1971)を読む。
「新しい」といっても、私が生まれる前の50年以上前の本である。
現在では教科書に載っているプレートテクトニクスやマントルの対流、地磁気の逆転などが、学界の大きなテーマであった頃で、当時の世界中の研究者の熱気が伝わってくる内容であった。

プレートテクトニクスの前の大陸移動説を唱えたアルフレッド・ウェゲナーは、ドイツ人なので、第一次世界大戦のために、研究が大いに妨げられてしまった。しかし、戦後の1924年には、気候学者のケッペンとともに『地質時代の気候』を出版している。
そもそもウェゲナーの大陸移動説は、岩石中の磁気を調べることで岩石がどれほど地磁気に対して移動したかを明らかにした古地磁気学によって復活したのである。

また、第二次大戦後、ドイツの莫大な軍事用火薬を処理する必要から、大西洋上の島で爆発させることになった。そのことを知ったヨーロッパの地質学者たちがいっせいに観測を行ったことから、大規模な地震探査法が登場している。

マントルの対流と書いたが、マントルは核の熱を放出するために対流することが明らかになっている。お椀の中の味噌汁を思い出してみると良い。鍋の下からガスで温めると、鍋の底にある水は、温められて熱膨張して体積が増える。体積が増えれば密度は小さくなって軽くなる。そうするとその部分は上に上がってくる。その代わりに表面にあった冷たい部分の水は下へ降りていく。こうやて対流は熱を伝えているのである。マントル対流の場合も、マントルの下の方の温度が高くて、その部分が熱膨張をし、鍋の中の水と同じように、熱対流を起こしていると考える。