ウィルソン・夏子『キューバ紀行:南の島の「社会主義観光国」を歩く』(彩流社 2006)を読む。
著者は、刊行当時、カナダ在住30年を数え、室内楽ピアノ奏者と日本語講師を経て、中米の国に関心を持つフリーライターである。1995年から2005年の10年間にわたって続けられたキューバ観光の様子がまとめられている。前半は海で溺れた経験や、何が言いたいのか分からないヘミングウェイへの思いなど、どうでもいいエピソードが続く。しかし、後半は、戦前キューバに移住し、過酷なサトウキビ農場で働き収容所に入れられた日本人や、キューバ革命に参戦した日系人など、あまり耳にしたことがない話があり興味深かった。
総じて、経済封鎖が続く社会主義国で生きるキューバ国民の逞しくも明るい人柄はよく伝わってきた。ゲバラのTシャツを売り物にし、奴隷監視塔を観光資源にするそのバイタリティには、チェ・ゲバラとフィデル・カストロの二人の偉人に先導されバティスタ政権を追い出し自分たちの国を作ったという自負が感じられた。
『キューバ紀行』
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