早稲田アカデミー社長 須野田誠『わが子を救う教育サバイバル術』(グローバル出版 2002)という塾の宣伝本を読む。
塾というのが単に学校の予習補習的なことをやっていれば事足りる時代は終わって、生徒一人一人のカウンセリングや入試動向の研究といったコンサルタント機能が問われる時代が来ていると述べる。早慶付属高校合格実績全国一の塾を経営する著者は、大学進学率で私立学校に完全な遅れを取った都立の現状に批判的であり、引いてはゆとり教育を押し進め、「学力低下」を招いている文科省の方針自体に懐疑的である。
しかしあまたある塾関係の案内パンフと大差はなく、週休2日で暇を持て余している小中学生の親の不安や不満をいたずらにかき立てて、学歴という一定程度安定した保証を商売のネタにしているだけである。『自由からの逃亡』にもある通り、選択が自由になればなるほど人間は旧来の安定を求めたがるものである。学力低下イコール旧来のガンバリズム礼賛といった安直な塾の宣伝文句に絡めとられないためには、地域と一体となった面倒見の良い異年齢が共に親しみあうような教育システムへのこだわりが求められる。
この本に紹介されていた新宿にあるSEGという数学英語物理化学の専門塾が気になった。学校の定期試験用の勉強は一切行っていないとのことである。ホームページを見ると「速読による能力訓練講座」と「文章表現スキルアップ講座」といった予備校らしくない講座に寄せる受講生の声が面白い。