日別アーカイブ: 2003年7月13日

『小説一八史略(1)』

陳舜臣『小説一八史略(1)』(講談社文庫 1992)を読む。
殷の紂王から秦の始皇帝までの約800年を概観したものだ。『史記』と重なっている部分も多く、有名なエピソードばかりである。「臥薪嘗胆」で有名な夫差と子胥のエピソードや始皇帝の統一までの生い立ちなど知っているようで知らない興味深い話が多かった。陳舜臣氏は中国における天下は一つが理想であるという思想は秦の時代に生まれたと指摘する。国土が大きく、人口も莫大で言葉も地域差が大きいゆえに、天下は一つであるべきだというナショナリズムが強くなることは歴史が証明している。確かに現在の中国の台湾への政策を見るにつけ、毛沢東と蒋介石の二人の関係や現在の世界情勢だけでは説明しきれない。人民の心の奥底に眠る中国観を分析していく必要があるだろう。

埼玉県知事

土屋埼玉県知事が当然のごとく辞任したが、この旧い土建屋体質にまみれた土屋王国の後を継ぐのは大変であろう。だが早くも自民党筋からは後継者として糸山英太郎氏の名前が挙がり始めている。彼のホームページを見るところ、今年の6月のコラムでは「私は今後の埼玉県の動向にはこれまで以上にきっちり目を光らせてゆくつもりだが、どうぞ善良で勤勉な埼玉県民の皆様も自らの良識に照らして勇気を持って立ち向かって頂きたい。もしそれでも万一またこのような破廉恥な独裁者が再選されかねない状況になれば、やむをえず私も第二の故郷である埼玉県のために身を挺してこれを阻止する覚悟はできている。」とやる気満々である。中曽根氏の秘書を努めて後、国政に出馬し、石原慎太郎氏とも「憂国の士」として仲が良いようだ。埼玉スタジアムに対する批判などまともなことも発言しているが、どうも「愛国心」をがなり立てる時代錯誤な経済観をお持ちのようだ。

今こそ日本人はナショナリズムに燃え、ソニー・JAL・三菱重工など日本の宝を守るために猛然と買いにいくべきなのだ。堪えきれずにあおぞら銀行を外資に売り渡そうとしている愛国心のかけらもない御仁も見受けるが、私に言わせれば問題外だ。日本の宝と言える企業が売られている様をただ見ているだけでは日本人とはいえない。2003年4月25日