陳舜臣『小説一八史略(1)』(講談社文庫 1992)を読む。
殷の紂王から秦の始皇帝までの約800年を概観したものだ。『史記』と重なっている部分も多く、有名なエピソードばかりである。「臥薪嘗胆」で有名な夫差と子胥のエピソードや始皇帝の統一までの生い立ちなど知っているようで知らない興味深い話が多かった。陳舜臣氏は中国における天下は一つが理想であるという思想は秦の時代に生まれたと指摘する。国土が大きく、人口も莫大で言葉も地域差が大きいゆえに、天下は一つであるべきだというナショナリズムが強くなることは歴史が証明している。確かに現在の中国の台湾への政策を見るにつけ、毛沢東と蒋介石の二人の関係や現在の世界情勢だけでは説明しきれない。人民の心の奥底に眠る中国観を分析していく必要があるだろう。
『小説一八史略(1)』
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