山本信幸『「キャバクラ」の経済学』(オーエス出版 1999)を読む。
私は寡聞にしてよく分からないが現在の日本の男性を虜にするキャバクラ商法なるものの実態がよく分かった。その不況を知らないキャバクラの集客のポイントは居場所と疑似恋愛だと著者は指摘する。会社では部下と上司の板挟みになり、OLに無視され、家ではごろごろする場所もない男性にとって、みんなが笑顔で迎えてくれ、自分の名前を覚えてくれるキャバクラが自分の「居場所」になるというのだ。そして順調にいくとホステスと本当の恋愛関係や肉体関係に発展するのではないかという期待が、離れさせず飽きさせず客を惹き付ける要素である。ちょうど大学のサークル部室を訪れるOBのような感覚であろうか。キャバクラというとつい性風俗産業の入り口と考えがちであるが、その実態は時間消費型のアロマテロピーなどの癒し産業に近い。著者はドイツの経済学者W.ゾンバルトの「贅沢者や女遊びのためのカネの支出は資本主義を引っ張る需要面での力である」という言葉を引用しながら、今の不況打開の秘策がキャバクラにあると指摘する。大学からサークル部室が消え、会社近くの雀荘が姿を消しつつある中で、こうした放課後型産業はますます希薄な人間関係のすき間を埋めていくことだろう。
『「キャバクラ」の経済学』
コメントを残す